2012年7月5日(木)
ヒッグス粒子候補発見
実験グループ 質量の起源に迫る
欧州素粒子原子核研究所(CERN(セルン))の粒子加速器を使う実験グループが4日、万物の重さの起源とされる「ヒッグス粒子」の有力候補を発見したとする暫定結果を発表しました。ただ、現時点ではヒッグス粒子とは断定できず、さらなるデータ収集が必要だとしています。
ヒッグスは、素粒子物理学の「標準理論」を構成する17種類の基本粒子で唯一、未発見の粒子。宇宙誕生時はすべての粒子は質量がゼロでしたが、宇宙が冷えたためにヒッグス粒子と結びついて質量をもったと考えられています。
今回、スイス・ジュネーブ郊外に建設され2009年に本格稼働した大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の測定器「アトラス」「CMS」を使って探索している2グループがそれぞれ、蓄積したデータをもとにした最新の研究成果を同時に発表したもの。実験グループには日本の研究者も多数参加しています。
両グループは昨年12月、ヒッグス粒子の存在を示唆する現象を検出したと発表。それが新粒子である確実性は99%未満でした。
今年4〜6月の実験によって昨年の2・5倍に増えたデータを解析した結果、125〜126ギガ電子ボルト(GeV=素粒子などの質量を示すエネルギーの単位で、陽子の質量が約1GeV)の質量をもつ新粒子をそれぞれ独立に観測しました。物理学の「発見」は99・9999%以上の確実性が必要ですが、今回の結果は、新粒子であることが確実なことを示しており、年末には、今回の観測結果の全体像がみえるとしています。
アトラス実験グループの浅井祥仁・東京大学准教授は「ヒッグス粒子の発見に、王手がかかった。今まではヒッグスを探していたが、ヒッグスを理解するという次のステップに移ったと言える」と話しています。
アトラス実験に日本から参加するのは東京大学や高エネルギー加速器研究機構(KEK)など16研究機関の約110人の研究者です。