2012年7月4日(水)
宮城・石巻 進まぬ災害公営住宅
「希望持てる住まいに」
被災者自ら提案始める
東日本大震災で住まいを失った人たちのあいだで、災害公営住宅が被災者本位のものになるのか、関心や不安が高まっています。建設用地が集まらず計画が混迷する宮城県石巻市では、入居を希望する被災者みずからが用地や形態、コミュニティー維持といった公営住宅のあり方を提案し始めました。(本田祐典)
|
党の呼びかけ契機
市中心部にある仮設大橋団地(540戸)。6月30日午後、集会所に住民らが一人、また一人と集まり始めました。
「公営住宅を大橋地区に望む会」の結成総会です。参加できなかった住民も含めて約100人が会員に名を連ね、仮設住宅の敷地に公営住宅を建てることを求めます。
「みんなで一緒に移れるように、最後までたたかおう」。呼びかけ人の一人(53)が訴えると、集会所は拍手で包まれました。
強い危機感
会結成の背景には、「このまま黙っていては、希望が持てる公営住宅にならない」という強い危機感があります。
市は災害公営住宅4000戸を計画しています。住宅再建への国の経済支援が手薄なため、自力で住まいを建てられない被災者はこの公営住宅が頼りです。
ところが―。
「建設用地が集まらない。目標の5分の1だ」。市震災復興部の担当者はもらします。
市が900戸分の用地を募集したところ、6月15日の締め切りまでに集まったのは、わずか180戸分(7カ所、1万2千平方メートル)でした。
土地の買い上げ価格が低いなど問題は山積み。「現段階では解決策を見いだせていない」(市震災復興部)という状況です。
道は開ける
一方、「望む会」の住民らは、「仮設住宅の敷地など公有地にちゃんと目を向ければ、用地確保の道は開ける」と解決策を提示します。総会ではさらに、仮設のコミュニティーを維持した入居や、家賃の引き下げ、福祉施設の併設なども提案しようと話し合いました。
会が結成されたきっかけは、日本共産党宮城県東部地区委員会が呼びかけている、仮設団地や被災地域ごとの住民懇談会「住まいと復興を考える会」でした。参加した住民の議論から、会がうまれたのです。
総会であいさつした三浦一敏党県議は、「行政に任せきりでなく、自分たちで声をあげる運動はたいへん貴重。みなさんの運動が実を結んで、住みやすい場所に公営住宅ができるように応援したい」と語りました。
会に参加する住民らは、「仮設の仲間と今後も暮らしたい。子どもに、また転校だよと言わないためにも頑張る」(同市雄勝町で被災の50歳男性)、「仮設住宅の周辺は病院や商店があって便利なところ。公営住宅のためにこそ、この土地を使ってほしい」(40代女性)などと話しています。
|