2012年7月4日(水)
震災がれき 処理早く(下)
岩手県宮古市
埋もれたスポーツの場
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岩手県沿岸地域で随一の規模を誇る宮古運動公園(宮古市)。野球場の電光掲示板を備えたスコアボードは、がれきの山の中に埋もれています。同公園は震災がれきの2次仮置き場になっています。
大会開けず
8コースある400メートルトラックを備える陸上競技場やテニスコートもすべて使えません。球音やスポーツに参加する人々の声が響くはずの運動公園で、ダンプカーによるがれきの搬入、重機による選別作業が行われています。
震災前、同野球場では、岩手県高等学校野球連盟の沿岸北地区の春と秋の県大会予選が行われていました。昨年春以降は代わりに近隣の岩泉町や山田町の球場で行ってきました。県高野連事務局の白樺美加さんは「本来の姿ではないということで、入場料を無料にしています。早く復旧してほしいですが、再建はかなり大変という話を聞き、心配しています」と話します。
同市田老の田老野球場では、小中学校の野球大会が開かれてきましたが、ここもがれきの1次仮置き場とされ、使えなくなっています。
同市教育委員会生涯学習課の長塚奉司課長は、「がれきがあることにより、スポーツ施設の復旧のスピードがにぶります。硬式野球の試合に必要な設備が整っている球場が市内になくなり、大変です」と話します。
宮古運動公園がある赤前地区には住宅地があります。日本共産党の田中尚市議(党宮古地区委員長)は「住民の日常生活に支障をきたさないよう、速やかに処理する必要があります。処理に何年もかけていいということはありません」と話します。
住民からは、「臭いやほこりがひどく、洗濯物を干せない」という声があがっています。同地区に住む漁業の男性(72)は、「北風が吹くと臭いが気になる。でも、もっと大変な思いをした人がいるからね…。(広域処理で)県外にお世話になっていて本当に申し訳ないと思います」と話しました。
費用が困難
被災地では、がれきを最大限、自分たちの地域で処理しようと、懸命に努力しています。宮古市、山田町、岩泉町、田野畑村でつくる宮古地区広域行政組合では、最終処分場を改修して容量を5万立方メートル追加しました。しかし、がれきは同市の不燃物だけでも40万トンあり、まったく足りません。
この4市町村は、がれきを処分するため、新たに最終処分場を建設したい考えです。しかし、費用負担が困難なため、国費での負担を政府に要請しています。
最終処分場が実現すれば大幅に処分が進みますが、それでもなお足りないため、広域処理に頼らざるをえない状況です。
東京都が受け入れている宮古市のがれきは、同市仮置き場での保管時、搬出のためのコンテナ積み込み後など繰り返し放射線量を測定。遮蔽線量率(自然からの放射線を遮断し、がれきそのものからの放射線量率を測定した値)は最大0・001マイクロシーベルト/時(6月28日)と、非常に低い値を示しています。
同市の山本正徳市長は訴えます。
「放射能の問題では、受け入れ自治体の基準を下回ることを厳格に確認しています。自分たちでできることはやり、どうしてもできないものを広域処理でお願いする、という考えです。ご理解とご協力をお願いしたいと思います」(おわり)