2012年6月30日(土)
主張
最低賃金
引き上げを経済再生の土台に
2012年度の最低賃金改定へ向けた議論が厚生労働省の中央最低賃金審議会で始まりました。同審議会は7月末に「目安」を決めます。それを受け各都道府県の審議会が地域別の改定額を秋に答申し、地方労働局長が決定します。
「働く貧困層」(ワーキングプア)の増加をはじめ貧困と格差拡大がますます深刻になるなか、「働けばまともな生活ができる賃金を」という声は痛切です。時給1000円以上にすることをはじめ抜本的な引き上げが急がれます。
安全網としての機能を
最低賃金は、国が賃金の最低限度を決め、事業主がその金額以上の賃金を労働者に支払わなければならない制度です。不当に低い賃金から労働者を保護するための「安全網」が本来の役割です。
ところが11年度の最低賃金は全国平均737円、最高が東京の837円、最低は岩手、高知、沖縄の645円です。フルタイムで働いても月10万〜13万円程度です。懸命に働いても、まともに暮らせない賃金しか保障されないという事態は異常です。
年収200万円以下のワーキングプアは1000万人以上にのぼります。労働者3人に1人は非正規雇用で、不安定で低い賃金で働かされています。労働者が普通に暮らせる収入を得られるようにするために最賃制度がその機能を果たすようにすることは待ったなしです。
最低賃金の大幅引き上げの声の広がりのなか、10年に政府・経営者(資本家)・労働者の間で「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、2020年までに全国平均1000円を目指す」との合意がされました。しかし、11年度は、「震災」の影響を持ち出した経営者側の主張により、中央最賃審議会の「目安」では過去5年で最低の1けたアップにとどまるなど本格的な引き上げは進んでいません。
被災地の復興のためにも、最賃引き上げこそ重要です。労働者の懐をあたためることが地域の活性化に直結します。全労連系の政策研究機関・労働運動総合研究所は、最低賃金を時給1000円に引き上げれば2200万人以上の労働者の賃金が上昇し、家計消費支出が4兆5千億円以上増加、国内総生産を0・8%押し上げる効果があると試算しました。最賃引き上げが、低賃金労働者のくらしを立て直すとともに、内需を拡大し日本経済を再生させる土台になることは明らかです。
北海道、宮城、神奈川で最低賃金が生活保護水準を下回ったままであることは重大です。最賃が生活保護水準を下回っていることをとらえて、生活保護費の引き下げを求める動きがあります。本末転倒です。最賃の本格的な引き上げに踏み出してこそ生活保護に頼らない人を増やすこともできるのです。「低さ」を競い合う悪循環は国民の願いに反します。
成長の柱に位置づけて
欧州諸国では最低賃金を成長戦略の柱に位置づけ、時給1000円以上、月20万円以上が当たり前です。世界の主要国のなかで賃金が下がり続けているのは日本だけです。中小企業への賃金助成の制度化をはじめ政府の支援を拡充しながら全国一律の最賃制度を確立するなど、異常事態の打開へ抜本的な対策に踏み出すべきです。