2012年6月28日(木)
原監督1億円供与に球界静観
社会的責任どう果たす
このまま、済ませるつもりなのか。
20日に発覚し、プロ球界を揺るがした巨人・原辰徳監督(53)の不祥事。2006年に、過去の女性関係に絡んで元暴力団員とみられる2人に1億円を支払っていたことがわかりました。その後も横浜DeNAの中畑清監督(58)の関与も取りざたされるなど騒ぎはひろがっていますが、この問題で球界に処分を求める動きはなく、組織の最終決定者であるコミッショナーは静観しています。
異常な擁護
それどころか、25日には巨人の渡辺恒雄・球団会長(86)が「原くんは絶対にやめさせないよ。やめさせる理由がない。来季もやってもらう」などと擁護しました。巨人のオーナーや球団社長も渡辺会長と同様な態度をとりつづけています。
彼らに共通するのは、原監督が接触した人物は反社会的な勢力ではない、というものです。しかし、2人組の1人は朝日新聞の取材で元暴力団員だったことを認めています。もう1人はすでに交通事故で死亡していますが、この男が所属していたという暴力団の元組長が09年にふたたびこの問題で巨人に接触して、脅しています。
暴力団の実態に詳しい作家の溝口敦氏は「1億円吹っかけたというのは、まさに暴力団的だ」といいます。ゆすり、たかりで金銭を要求したこと自体、反社会的な犯罪行為です。原監督自身も「ゆすられていると思い、不安を感じた。浅はかなことをした」と述べています。
「暴排」中に
野球協約では「暴力団、あるいは暴力団と関係が認められる団体の構成員または関係者、その他の反社会的勢力と交際し、または行動をともにし、これらの者との間で金品の授受、饗応(きょうおう)、その他いっさいの利益を収受または供与し、要求または申し込み、約束」した場合、コミッショナーは該当する球団や個人を1年間の失格処分または無期の失格処分とすることを定めています。この条文にてらしても、今回の問題でコミッショナーが関係者から事情を聞き、そのうえで何らかの処分を下すのは当然の措置です。
しかもプロ野球機構は03年に「暴力団等排除宣言」を行い、全12球団などで構成する「プロ野球暴力団等排除対策協議会」を結成し、プロスポーツでは初めてとなる排除活動にのりだしました。11年には2度目の「排除宣言」を発表し、その最初に「暴力団等反社会的勢力と一切かかわりません」と明記しています。
加藤良三コミッショナーも「球場の外で知らぬ間に暴力団・反社会的勢力と選手とのかかわりができてしまうことに対して注意しなければならない」と喚起しています。
球界全体で暴力団追放に力を入れている最中に原監督は怪しげな人物に1億円を支払い、巨人は09年にその事実を知りながら公にしませんでした。原監督は09年に「暴力団に金を出さない」とうたった警視庁ポスターのモデルにも起用されていますが、どういう心境だったのか。
プロ野球には、野球というスポーツを通して、健全な社会づくりや青少年育成に貢献する役割があるはずです。その社会的な責任を、どう果たすつもりなのでしょうか。 (代田幸弘)