2012年6月23日(土)
死者1万5000人超す
空軍大佐離反 軍の求心力低下
シリア
【カイロ=小泉大介】英国に拠点を置く「シリア人権監視団」は21日、昨年3月以来のシリア政府軍の住民攻撃と反政府武装勢力の反撃による総死者数が1万5000人を超えたと発表しました。同日には、空軍兵士が戦闘機で隣国ヨルダンに着陸し政治亡命。政府軍の求心力低下も明らかになっています。
シリアでは同日も中西部ホムスや南西部ダラアはじめ全土で戦闘が発生し、「シリア人権監視団」によると、168人が死亡。死者の大半は民間人ですが、政府軍兵士も54人死亡しており、反政府武装勢力の反撃が激しさを増していることがうかがえます。
こうした状況の中、シリア空軍所属のロシア製ミグ21戦闘機が21日、ヨルダン北部の軍事基地に緊急着陸。パイロットのハマダ大佐が政治亡命を申請し、ヨルダン政府は同日の閣議でこれを了承しました。シリア国防省は同日、大佐は「祖国に対する裏切り者だ」と声明し、ヨルダン政府に機体を引き渡すよう求めました。
シリアでは昨年3月に政府軍が住民弾圧を開始して以降、数万人の兵士が離反し、一部が反政府武装組織「自由シリア軍」に参加していますが、空軍機を使って兵士が離反したのは今回が初めて。空軍はアサド大統領の父、故ハフェズ・アサド前大統領の出身母体だったこともあり、これまで政権への忠誠心が非常に高いと目されてきました。
シリア政府軍に対する包囲網は国際社会の間でも狭まり、アラブ連盟のヒッリ事務局次長は21日、ロシアのインタファクス通信に対し、「ロシアによる武器供与は、民間人殺害を手助けするものだ」と述べ、ロシアにシリアへの武器供与を停止するよう求めました。