2012年6月21日(木)
原子力規制委設置法案、民自公が強行、可決成立
短時間審議で採決、市田氏が反対討論
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民自公3党がまとめた原子力規制委員会設置法案が、20日の参院本会議で3党と国民新党などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、みんなの党、社民党、新党改革、新党大地は反対しました。
日本共産党の市田忠義議員は、同日の環境委員会で反対討論に立ち、福島原発事故の教訓を踏まえて慎重審議が必要であるにもかかわらず、参考人質疑もなく、短期間の審議で採決を強行することは到底許されないと批判しました。
原発の運転期間を原則40年とし、最長60年まで延長可能としたことは安全性より企業の利益を優先するもので、さらにこの制限まで法案成立後に見直すというのは、老朽化原発の半永久的運転を容認するものだと指摘しました。
原発推進の一翼を担ってきた環境省に規制機関を置くのでは、原子力推進機関からの完全な分離・独立は担保されないと強調。原子力基本法の改定では「原子力利用」について「我が国の安全保障に資する」と書き加えたことは、政府が掲げる「原子力平和利用3原則」にさえ抵触すると指摘しました。
大飯原発の再稼働決定に強く抗議するとともに、「原発ゼロ」を政治決断し、それと一体で廃炉から使用済み核燃料処理などのすべてを規制する強力な権限を持った規制機関とすべきだと主張しました。
解説
事故教訓生かさず、骨抜き機関に
20日の参院本会議で成立した原子力規制委員会設置関連法は、内容から審議の進め方に至るまで問題だらけでした。
日本の原子力行政は、電力会社を頂点とする「原発利益共同体」によって大きくゆがめられてきました。原子力安全委員会や原子力安全・保安院は、原発「安全神話」を振りまき、安全より経済利益優先の原発推進政策を支えてきました。金銭の授受などを通じた原発関連業界との癒着や、原発シンポジウムなどでの「やらせ質問」動員への協力まで発覚。独立した規制機関設置は国民的要求となっていたのです。
ところが、新たに設置が決まった原子力規制委員会は、原発立地に異を唱えたこともなく、地球温暖化対策として原発推進を掲げてきた環境省のもとに設置。推進機関からの分離・独立の担保はまったくない、骨抜きの規制組織として発足します。
さらに民自公3党は、原子炉は原則40年との運転規制をしていた政府案を改悪し、老朽化原発の半永久的な運転を事実上容認。原子力基本法が定める原子力利用の目的に「我が国の安全保障に資する」との一文を盛り込むなど、政府が掲げる「原子力利用平和3原則」にも抵触する修正も加えたのです。
運転30年で原子炉の脆性(ぜいせい)劣化は「危険領域に近づいている」との指摘(日本共産党の吉井英勝衆院議員)に対し、細野豪志環境相は「巨大な投資」をした電力会社に廃炉を迫ることは「大変なこと」だと答弁し、業界の利益を代弁。規制機関のあり方を議論する資格さえ問われる、安全軽視の姿勢が浮かび上がりました。
大飯原発再稼働に向けて、立地自治体の首長から政府に対し新たな規制機関設置を求める声があがっていました。再稼働推進の立場で一致する3党が、再稼働の条件づくりとしての規制機関設置を急いだ結果、衆院では3党案提出の当日に、参院では2日間の審議だけで、いずれも参考人質疑もないまま可決が強行されたのです。
こんな規制委員会をそのままにすることはできません。「原発ゼロ」を政治決断し、廃炉から安全対策、核燃料処理などのすべてを一体的かつ強力に規制する真の独立した規制機関へと改めることが、福島原発事故原因究明に立った教訓を生かす道です。(林信誠)
放射能
汚染防止規定なし
規制機関法案 市田氏が批判
日本共産党の市田忠義議員は20日の参院環境委員会で、原子力規制委員会設置法案に含まれる原子力基本法などの法改定に、放射性物質による環境汚染や健康被害の防止措置が一切盛り込まれていないと追及しました。
市田氏は、環境基本法で定めている国が講じる施策の中に、原発事故などで放出された「放射性物質による環境汚染」についての規定が盛り込まれた一方で、原子力基本法や原子炉等規制法などには具体的な環境汚染防止措置が規定されていないとただしました。
近藤昭一衆院環境委員長代理(提出者)と細野豪志環境相は、原子力基本法と原子炉等規制法の改定案に「環境の保全」が盛り込まれると説明。市田氏は、「環境の保全」という一般的規定ではなく、大気、水質、土壌などの環境保全の法律と原子力基本法など原発関連の法律のいずれにも抜本的な見直しが急がれると主張しました。
細野環境相は、「大気汚染防止法や土壌汚染に関する法律にしっかりと放射性物質の問題についてあらためて明記する必要性は感じている」と答え、法律の見直しを検討していく考えを表明しました。
市田氏は、原子力基本法の改定案に「我が国の安全保障に資する」と明記されたことを追及。軍事的要素を盛り込むもので、政府の「原子力平和利用3原則」にも抵触するとして、「到底容認できない」と批判しました。