2012年6月19日(火)
同胞団が勝利宣言
エジプト大統領選 軍は権限拡大へ
【カイロ=小泉大介】昨年初めの「革命」後の国づくりに影響を与えるエジプト大統領選挙決選投票(16、17日)の開票が進んだ18日未明、イスラム主義組織・ムスリム同胞団のモルシ候補は独自集計をもとに勝利宣言しました。一方、これに先立つ17日、実権を握る軍最高評議会は、自らの権限を拡大する新たな「憲法宣言」を発表。今後、同国情勢は波乱含みの展開となる可能性が出ています。
今回の大統領選決選投票は、モルシ候補と、前ムバラク政権最後の首相を務めたシャフィク候補との争いとなりました。選挙管理委員会による公式結果発表は21日となる見込みですが、モルシ陣営は18日未明の段階で、同候補の得票率が約53%、シャフィク候補は約47%と発表。シャフィク陣営はこれを完全に否定しました。
モルシ候補は勝利宣言の会見で「この勝利は革命派国民、男性、女性、労働者、学生、イスラム教徒、キリスト教徒ら全てのエジプト人のものだ」「私は市民的、民主的、近代的な国家の建設を目指す」と表明しました。
同候補は、大統領選第1回投票(5月23、24日)で「イスラム法(シャリア)による統治」を掲げ約25%の得票で1位になりました。しかし、決選投票では「全エジプト人の結集」を盛んに訴え、副大統領や首相の同胞団以外からの任命や、連立政権の樹立などを「約束」。「腐敗したムバラク時代に戻るわけにはいかない」とし、「革命推進」をアピールしました。
治安機関や旧政権与党勢力、財界などの後押しを受けて第1回投票を2位(24%)で通過したシャフィク候補は今回、旧政権時代の政治経験、治安回復、経済の安定などを訴えました。
一方、軍最高評議会は17日、昨年3月に公布した「憲法宣言」を修正する新たな「宣言」を発表。「宣戦布告」をはじめ、軍に関するすべての権限を同評議会が掌握するほか、先に解散が決まった人民議会(下院)が再度選出されるまでという条件付きながら、立法権や憲法起草委員選定の権限も握る中身となっています。
軍の権限強化の動きには国民から「軍部はクーデターを目指している」「新大統領の権限を著しく弱めるものだ」などの厳しい批判が起こっています。