2012年6月19日(火)
主張
「リオ+20」
先進国と途上国の協力強めて
地球環境の保全など「持続可能な開発」を掲げ、首脳級の各国代表らが参加して経済や社会のあり方を議論する国連の会議「リオ+20」が、ブラジルのリオデジャネイロで20日に開幕します。
地球環境の悪化に加え、世界経済は2008年のリーマン・ショックから現在のユーロ危機と揺れ続けています。経済発展のあり方や援助をめぐる先進国と途上国との対立も先鋭化しています。環境対策を組み込んだ経済発展に向け成果をあげるには、両者が協力を強める必要があります。
難航する事前交渉
会議で採択される成果文書の事前交渉は、負担を避けたい先進国といっそうの資金・技術援助を求める途上国との対立を反映して難航しています。15日までの事前交渉で合意されたのは全体の「37%」にとどまり、会議が3日間と短いことからも、合意の進展を危ぶむ声が強くなっています。
地球規模での環境問題で、先進国は主要な責任を負っています。地球温暖化では、先進国は歴史的に温室効果ガスを大量排出してきました。被害は海面上昇に直面する島しょ国や砂漠化などで食料危機に見舞われるアフリカ諸国など、途上国に集中しています。
一方で途上国には、先進国の歴史的誤りを繰り返さず、環境を保全することが求められます。先進国と途上国とは、共通の責任をもつが貢献の度合いは異なるとする原則が、20年前の地球サミットで確認されています。
ところが中国などの新興国が高い成長を続けるなか、先進国はますますこれらの国々に同等の責任を求めています。今回の会議でも、日本や米国などが「共通だが差異ある責任」の原則の確認に反対して途上国と対立しています。この原則は先進国と途上国との協力の基本にかかわるだけに、今回の会議はもとより今後の国際交渉を前進させるにも、先進国がその主張をあらためることが必要です。
途上国にとって貧困の一掃は「持続的な開発」の焦点です。文書案は貧困の一掃を「世界が直面する最大の課題」と位置づけました。米国は「貧困」の範囲を限定するよう要求しましたが、交渉では位置づけを後退させないことが確認されたと伝えられ、合意に向けた一歩として注目されます。
地球サミットから20年の節目に開かれる会議には、世界経済に起きた構造変化が反映されなければなりません。かつて途上国は、国際通貨基金(IMF)・世界銀行から、緊縮政策や民営化、規制緩和などを柱とする新自由主義政策が押しつけられ、貧困が激化しました。背景には米国を中心とした多国籍企業の利潤第一主義があります。米国発の世界的な危機で米国モデルが崩壊するなか、新自由主義に批判が集中しています。
首脳不参加の先進国
「リオ+20」は約130カ国が参加する今年最大の国際会議です。しかし、野田佳彦首相をはじめ米、英、独などの首脳は出席せず、メキシコで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議後、帰国の予定です。先進国が当面の経済運営に追われていることが、地球規模の環境問題での対策が進まない大きな理由となっています。途上国との協力を拡大するにも、先進国がみずからの経済のあり方を見直すことが不可欠です。