2012年6月15日(金)
主張
大飯原発再稼働強行
国民と世界を裏切るものだ
民主党・野田佳彦政権は、東京電力福島原発の重大事故で国民と世界に大きな被害を与えたことをもはや忘れてしまったのか。いまだに避難を余儀なくされている16万人にも上る福島県民の苦しみに思いは至らないのか。
福島原発事故を機に日本国内でも世界でも危険な原発からの撤退を求める世論と運動が広がっているのに、野田政権が事故後初めてとなる関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を強行しようとしていることに怒りがふきあがっています。安全抜きの再稼働強行はまさに国民と世界を裏切るものです。
「安全神話」と恫喝
野田首相は先週、「国民の生活を守るため、大飯原発を再起動すべきというのが私の判断」とのべ、これを受け立地自治体の福井県とおおい町が再稼働に動きました。野田首相と西川一誠福井県知事が会談したあと閣僚会議で正式決定しようとしています。文字通り国民の反対を踏みにじる暴走です。
野田首相は「福島のような事故は決して起こさない」「事故を防止できる対策と体制は整っている」といいました。福井県の西川知事も「安全対策はできている」と発言しています。いったいなぜそんなことがいえるのか。
福島原発は外部電源も非常用電源も途絶えて炉心が冷却できなくなり、炉心の溶融を引き起こして、放射性物質を拡散させました。東電や政府の事故原因の究明もまだ終わっていません。大飯原発でもあわてて非常用電源車などを配置しただけです。福島原発を襲った程度の地震や津波に耐えられると豪語しますが、揺れや津波はそれぞれの地震ごとに異なります。大飯原発の敷地内に活断層があり、より大きな揺れが起こるという指摘もあります。
第一、政府が行ったストレステスト(耐性試験)は事故が起きた場合の対策も避難計画もなく、「安全対策」として挙げられている免震事務棟や防波堤のかさ上げも完成は何年も先です。これで「事故を防止する対策は整っている」とはとてもいえません。「事故は起きない」といいはるのは、国民を欺く「安全神話」そのものです。
野田首相は、原発を止めたままでは、「日本の社会は立ち行かない」といいます。その理由としてあげるのは電力不足や化石燃料の輸入による電気料金値上がりですが、原発の安全性と電力不足や料金問題をてんびんにかけるのは最悪の恫喝(どうかつ)です。原発がいったん事故を起こせば取り返しのつかない事態になります。一日も早く原発からの撤退を決断してこそ再生エネルギーや省エネルギーの対策も進めることができます。再稼働はそのチャンスを失わせる点でも重大です。
本音は原発推進なのか
原発を規制する体制がないことを批判された野田政権はあわてて自民党などと原子力規制機関設置法の「修正」協議を進めています。それこそ規制庁設置を再稼働のお墨付きにする悪あがきです。
民主党内には、大飯原発を再稼働させたあと、北海道電力泊原発や四国電力伊方原発の再稼働も「粛々と」(仙谷由人政調会長代行)進めるとの声も出ています。
「脱原発依存」を掲げながら、原発推進が野田内閣の本音なのか。大飯原発再稼働を原発再開の突破口にさせないためにも、いまこそ国民の世論と運動が重要です。