2012年6月15日(金)
「大飯」防災拠点 原発オフサイトセンター
海抜わずか2メートル
津波・放射性物質 大震災の教訓いかさず
関西電力大飯原発(福井県おおい町)で事故が起きたときのために政府が「特別の監視体制」を置くとする、同原発のオフサイトセンター(県大飯原子力防災センター)。訪ねてみると、災害時に機能を失う可能性が高いことが分かりました。東日本大震災の教訓がいかされない防災拠点をみると、再稼働の前提である「安全性」の危うい実態が浮かんできました。(大星史路、本田祐典)
護岸からも100メートル足らず
6メートル高い 女川は崩壊
|
|
オフサイトセンターがあるのは大飯原発から7キロ離れた、おおい町内の海岸沿いです。
敷地は海に接し、護岸から施設までは100メートルたらず、海抜はわずか2メートル。町が東日本大震災の直前につくった、「被害想定が甘いので見直し中」(町総務課)だというハザードマップでも、津波襲来時の浸水地域とされます。
「津波が来た場合に、施設が機能するかどうかは何とも言えない。防波堤のかさ上げは予定していない」。オフサイトセンターの中村秀樹所長は、口ごもります。
東日本大震災では、宮城県女川町の東北電力女川原発のオフサイトセンター(海抜8メートル)に津波が押し寄せ、大友稔所長(当時)や避難してきた住民らが犠牲になりました。
職員の安全さえ
政府は「特別な監視体制」として、経済産業副大臣を責任者に原子力・安全保安院の職員ら20人を、おおい町のオフサイトセンターに配置するとしていますが、こうした職員の安全すら守れません。
非常時の電源は、本館に隣接する建屋に設置されたディーゼル発電機1基です。17時間は発電可能としますが、発電機と建屋は防水措置が取られていないため、排気口から水が入れば使えません。
オフサイトセンターの敷地にも問題があります。周辺を歩くと、あちこちに地盤の隆起や道路のひび割れが―。この一帯は大飯原発3、4号機の建設残土を使った埋め立て地です。
日本共産党の猿橋巧町議は、「もともとヘドロが堆積した入り江で、埋め立て当初から地盤が安定しなかった場所だ。東日本大震災で大きな被害を出した液状化現象が起きれば、護岸の崩壊、地盤沈下が懸念される」と指摘します。
また、施設の空調設備には放射性物質の流入を防ぐ空気浄化フィルターが設置されていません。
東京電力福島第1原発事故では、同原発から5キロの大熊町のオフサイトセンターにフィルターがなかったために屋内の放射線量が高くなり、事故4日後にセンターを放棄して約60キロの福島市まで撤退しました。
「ヨウ素・セシウムフィルターをどこまでつけるか、これから検討する」と中村所長。
“どこが安全か”
周辺住民の多くは、こうしたオフサイトセンターの実態を詳しく知りません。
おおい町で暮らす女性(26)は2歳の長女を抱き、「海沿いにあるのが非常時の拠点なの?」と驚きます。保育料が安いなど、間接的に原発に暮らしを支えられてきましたが、再稼働には冷ややかな目を向けます。
「再稼働に賛成か反対か以前に、肝心の情報が地元の私たちに伝わらない。いざというときに、どう逃げるかも説明されていない。安全だという話と実態がまるで違う」