2012年6月8日(金)
きょうの潮流
ことし、親族や友人の命日がくると、ふと思い出す話があります。数カ月前に伝えられた、オーストラリアの女性の証言です▼彼女は、患者の苦痛を和らげる緩和ケアの仕事に携わったブロンニー・ウェアさん。人生最後のときと自覚した患者たちは、悔やむ胸のうちを語りました。彼女は、よく聞いた後悔の言葉を五つあげています▼「自分自身に忠実に生きればよかった」。いちばん多い後悔といいます。夢を捨てたり意思を曲げたりしてきた、無念の思いです。次に、「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」が多かったそうです▼仕事に時間をとられ過ぎ、あまり家族と過ごせなかった。3番目は、「もっと自分の気持ちを表す勇気をもてばよかった」。気持ちを殺し、いいたいこともいわなかった。4番目は、「友人関係をもっと続けていればよかった」▼最後が、「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」です。ウェアさんによると、世間の古い習わしなどにしばられた人生を「快適」と勘違いし、変化をおそれ、幸せをみずからつかむ選択を避けてきた人が多い。さて、日本人の場合はどうでしょう▼厚労省の計算によれば、日本人の平均寿命は、2010年で男性79・64歳、女性86・39歳でした。さまざま考えさせられます。なんといっても、長寿社会に生きる誰もが後悔の少なくてすむ人生を送れる国でありたい、と。あるいは、社会の変革を志す私たち自身にとって悔いの少ない人生をつらぬくとは?についても、です。