2012年6月7日(木)
主張
出生率の横ばい
「少子化」打開の社会へ真剣に
厚生労働省が発表した2011年の合計特殊出生率(女性1人が一生に産む子ども数の推計)は1・39で前年と同水準にとどまりました。生まれた子どもの人数は前年比で2万606人減の105万698人となり最低を更新しました。先進国のなかでも極端にすすむ「少子化」に歯止めがかかっていないことは、将来の日本社会のあり方にかかわる重大問題です。安心して子どもを産み、育てることができる社会に転換することがますます急がれます。
希望妨げる異常な現実
現在の人口を維持できる合計特殊出生率は2・08といわれています。同出生率は05年に1・26と最低を記録しましたが、06年からやや上向き、昨年まで微増してきました。相対的に人数が多い「団塊ジュニア」(1971〜74年生まれ)世代の、高い年齢での出産が増えたことなどが要因といわれていました。
しかし、これは一時的だったのです。団塊ジュニア世代の高年齢化がすすみ、それ以下の世代の人口も減少し、出生率は低下傾向です。合計特殊出生率が変わらなかったのに11年の出生数が減ったのは、15〜49歳の女性人口数が減ったためです。結婚件数も約66万1800件と過去最低でした。
結婚や出産は、国民一人ひとりの選択であり、その権利が尊重されるのは当然です。問題は、「結婚したい、子どもを持ちたい」と希望している人たちが多いのに、日本社会のゆがみが、その希望の実現を妨げていることです。
「少子化」についての内閣府の国際意識調査(11年)では、欲しい子ども数を「2人」「3人」と答えた親が日本では8割以上です。にもかかわらず、「欲しい子ども数まで増やせない」という人が5割以上で、フランスやスウェーデンより高くなっています。その理由の最多が「子育てや教育にお金がかかりすぎる」(約4割)でした。
2000年から10年で、子育て世代の年間の可処分所得は、29歳以下で25万円、30〜39歳で22万円とそれぞれ大幅に減少しました。自公政権の「構造改革」路線による低賃金労働の常態化・非正規雇用の拡大が子育て世代を直撃しています。経済的理由によって出産・子育てをあきらめざるをえないのは異常というほかありません。
子育て世代の負担を軽減し、子育てを支援することは待ったなしです。出産で退職する女性が6割にのぼり、30代男性の約5人に1人が週60時間以上も働くという職場と労働の是正は急務です。
民主党は09年総選挙で「子ども手当」導入などを掲げましたが、野田佳彦内閣は、自公政権時代の「児童手当」に逆戻りさせ、年少扶養控除の廃止という新たな負担を強いる結果しかもたらしませんでした。消費税大増税は、子育て世代にも重い負担となってのしかかるもので若者の希望を奪う最悪の道です。
「一体改悪」の愚挙やめよ
野田政権が「一体改革」の目玉にする「子ども子育て新システム」は、安心の保育を求める親の願いに逆行し、保育の公的責任を後退させるものです。大企業や富裕層に応分の負担を求めることや、国民のふところを豊かにする抜本改革を行い、消費税増税に頼らなくても国民が安心できる経済社会への転換が求められています。