2012年6月6日(水)
いまメディアで
国民の声無視し増税指南
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消費税増税法案の採決に向けた「環境整備」と位置づけられた野田第2次改造内閣の発足。全国紙は5日付社説でいっせいに「首相が陣頭指揮に立て」(「朝日」)「修正合意への重い使命」(「毎日」)「日本の命運かかる6月政局」(「読売」)など、民主・自民両党の“増税談合”による法案成立をあおっています。国民多数の反対をまったく無視して増税強行を説く翼賛報道は異常きわまります。
異常な翼賛報道
社説は、“増税談合”のやり方まで指南するなど、報道機関というより政局の当事者と化しています。「朝日」は「最初から立場が違う党と折り合うのは難しい…野党第1党の自民との協議を優先するしかあるまい」と談合を推奨し、「自民党との合意づくりに真剣にのぞむ人材を選ぶべきだ」とまで主張。「読売」も「自民党の谷垣総裁との党首会談によって、困難な局面を打開することも有力な選択肢だ」とのべています。重要法案であればあるほど徹底審議を行うという議会制民主主義の大道から目を背け、手段を選ばぬ増税談合をすすめているのです。
翼賛報道は異常な加速ぶりです。「読売」は5日までの1週間で、増税法案をめぐって5本の社説を掲げ、「首相はぶれずに『採決』へ進め」と説き、「朝日」も4本の社説で「自民との協調が優先だ」「修正協議進める好機だ」などの見出しで、「首相はもはや腹をくくるときだ」とけしかけてきました。
中身の検討なし
これらの社説では、消費税大増税をあおる一方で、増税法案の中身の検討はありません。この間の国会論戦でも、経済も財政も共倒れになる、中小企業が価格に転嫁できない問題を解決できない、まともな「逆進性対策」も示せない、など政府の増税推進論は総崩れです。4日の地方公聴会でも、大震災被災地の中小業者や医療関係者から増税反対の悲痛な訴えがありました。そうした問題点にはまともに向きあわず政局指南に走るなどというのは、報道機関の責務を放棄したものといわなければなりません。
かつては重要法案で必ず掲載した各党インタビューも「一体改革」法案では企画されていません。
「毎日」4日付の世論調査でも消費税増税法案に「反対」の人は57%。「朝日」1日付には、「消費増税より富裕層の増税を」との投書が掲載されました。全国紙はこうした国民多数の意見を封殺しているのです。「朝日」の紙面審議会では、委員から「増税に反対の人たちは、財政再建や社会保障をどうするべきだと考えているのか、という報道が少ない」と指摘されたほどです(5月3日付)。
反対世論を無視・封殺したうえで、「千載一遇の機会を逃してはならない」(「読売」2日付)とばかりに、増税の翼賛報道に走る―全国紙の姿勢は報道機関としての自殺行為というほかありません。(竹原東吾)