2012年6月4日(月)
野田内閣の危うい構造示す二つの文書
経産省が再稼働でふりつけ
野田内閣は、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を突破口に全国の原発を全面的に再稼働させる方向へ舵(かじ)を切る構えです。
野党時代から電力業界と会合
東京電力福島第1原発事故の原因究明は道半ば、法律で設置した国会事故調査委員会はまだ調査続行中、安全基準や避難計画の見直し、独立した規制機関もできないなかでの見切り発車=再稼働は「第二のフクシマ」が起きる危険をはらんでいます。
再稼働を急ぐ野田政権の「危うい構造」を見てみました。
1枚のメモ
1枚のペーパーがあります。原発再稼働へレールを敷くため昨年11月4日に初会合を開いた「電力改革及び東京電力に関する閣僚会合」(座長・藤村官房長官)を前に、同10月下旬に経済産業省の関係部門が作成したA4判大のメモ。
メモには、「来週、大飯がストレステスト提出見込み。その後は順次」。EPZ(緊急時計画区域)を30キロ圏内に拡大する問題について、関係自治体が3倍になり、地域防災計画見直しが必須となることから「再稼働への圧力」となるとの懸念を示し、「エネ庁を中心に丁寧な説明・理解獲得が必要」とEPZの見直しを阻む方向が記されています。
新たな原子力規制機関の設置場所については「経済産業省別館が最も効率的」と、原発事故を招いた一因とされる安全・規制行政と原発推進の一体的なあり方に固執する立場を明記しています。
枝野経済産業相の再稼働に向けた一連の発言は、「メモ」に示される方向性を踏まえておこなわれてきたとされています。
エネルギー懇談会
手元に1枚の会合文書があります。09年2月10日、午前11時45分から東京のフォーシーズンズホテル(東京都文京区)で開かれた「第26回エネルギー懇談会」。当時野党の民主党と東京電力など電力3社トップとの定期会合です。
民主党側は岡田克也(副総理)、川端達夫(総務相)、仙谷由人(政調会長代行)、筒井信隆(農水副大臣)、中川正春(防災相)=カッコ内の肩書は現職。
電力業界側は東電から勝俣恒久現会長、西澤俊夫現社長ほか副社長、関西電力副社長、中部電力副社長。また電気事業連合会、日本原子力産業協会から事務局幹部が出席、「地球温暖化への対応」をテーマに昼食をしながら懇談しました。
民主党政権の首脳陣が東電福島第1原発事故以前から電力業界と親密で構造的な癒着関係にあったことを物語る会合です。
国民を脅かして
政権与党内で再稼働方針をリードしてきたのは先の会合に出ていた岡田、仙谷両氏ら、野田佳彦首相に最も近い人物です。
岡田氏は民主党幹事長当時の昨年6月、東電福島第1原発事故から3カ月時点で「定期点検の終わったものは再稼働が必要だ」とのべていました。仙谷氏は、全原発停止なら「日本が集団自殺するようなことになってしまう」(4月16日名古屋市)と国民を脅かしてまで原発再稼働の受け入れを求めました。
地元住民も不安
NHK世論調査(5月31日放送)によると、大飯原発の運転再開について、大阪市、京都府、滋賀県など周辺5市町で再開に反対が55%前後で半数を超え、賛成は38%でした。地元の福井県おおい町では、「賛成」「どちらかといえば賛成」をあわせて60%強でしたが、「不安だ」が64%を占めました。
首脳陣が再稼働に前のめり姿勢の民主党内では、再稼働に慎重な対応をもとめる署名運動が展開されています。