2012年6月3日(日)
原子力規制機関設置法案
狙いは大飯原発再稼働
原子力規制機関設置関連法案が1日、環境委員会で審議入りしました。民主党は自公両党と修正協議を進め、12日にも衆院を通過させようと狙っています。野田佳彦首相が週明けにも行うとみられる大飯(おおい)原発再稼働に向けたアリバイづくりにすぎないことが浮き彫りになっています。
原発を推進してきた原子力安全委員会や原子力安全・保安院の信頼が地に落ちたもとで、どのような原子力規制機関を設置するかは国民的課題でした。地元合意をめぐっても、京都府と滋賀県の知事は7項目の共同提言のなかで原子力規制庁の早期設置を求めていました。
それを逆手にとって野田内閣は規制庁設置を原発再稼働と結びつけ、前提条件のように扱ってきました。
審議入り強調
細野豪志原発事故担当相は5月30日の関西広域連合会合で、原子力規制庁の設置法案が国会で審議入りしたことを強調。規制庁が発足後に定める新たな基準にもとづいて再稼働を再度評価するなどと説明し、地元の容認姿勢を引きだそうとしました。
野田首相は同日の関係閣僚会合で、「一刻も早く新たな原子力規制庁を実現」し、「国民の信頼回復に万全をつくしていきたい」としながら、大飯原発再稼働については「私の責任で判断する」などと述べました。
しかし、その規制庁でさえ発足までには時間がかかるため、野田政権は「暫定的」と称して同庁発足前に再稼働を強行しようとしています。首相の「責任」に科学的根拠も、国民が信頼できる道理も大義もありません。
そもそも、提案されている規制庁は、国民が求めるまともな規制機関とはなりえないものです。
推進機関と規制機関は完全に分離しなければならないというのは国際的な原則です。ところが、政府案は原子力規制庁を環境省の外局として設置するものです。
環境省も推進
環境省は、これまでのアセスメント(環境影響評価調査)で原発立地に異議を唱えたことは一度もなく、現在でも地球温暖化防止対策の法案に「原発推進」を書き込むなど、れっきとした原発推進機関です。規制庁の職員には、経産省、文科省など原発推進機関からの出向者を充て、財源も電源開発促進税に依存する内容です。
民主党が“丸のみ”する考えを示している自公案は、原子力規制委員会を設置するとしていますが、環境省の外局とする点では違いがありません。何より、両案とも原発推進・再稼働のための「規制機関」でしかありません。
日本共産党は、「原発ゼロ」の政治的決断をし、原子力規制機関は、廃炉や使用済み核燃料の処理までを担う機関と位置づけるよう求めています。この方向こそ国民の願いに応える道です。
(林信誠)