2012年6月2日(土)
“まともな生活するには収入改善が必要”
最低賃金 時給1000円
生活保護財政を削減
労働総研試算
最低賃金を時給1000円に引き上げれば、働いても生活保護を受けざるをえない16・4万世帯の収入が改善し、3800億円の財政支出削減となる―。労働運動総合研究所(労働総研)はこのほど、東京都内で会見し、最賃を全国一律1000円へ引き上げることによる経済・財政への波及効果を試算し、「最賃引き上げは日本経済再生の第一歩」だとする報告を発表しました。
試算は、厚労省「賃金構造基本統計調査(2009年)」を基礎に行われました。最賃を時給1000円へ引き上げると、2252万人の労働者の賃金が月平均2万4049円上昇し、全体の賃金総額が年間6兆3728億円増加。それにともない、内需(家計消費支出)が4兆5601億円増加し、国内生産が7兆7858億円拡大、国内総生産(GDP)を0・8%押し上げる効果があるとしています。
生活保護世帯が1990年代後半から急増し、財政負担が約3兆円となっていますが、被保護世帯の12・9%は働いている世帯です。時給1000円でこの多くが生活保護から解放されるため、3800億円の財政支出を削減できます。
現在、最賃は全国平均で時給737円。厚労省調査によっても、生活保護水準を下回っているのが3道県です。
最賃の1000円への引き上げには、企業全体で6兆5841億円の原資が必要ですが、資本金10億円以上の大企業の内部留保257・7兆円(2009年度末)の2・55%ですみます。報告は、中小企業に対しては、大企業の下請け買いたたきをやめさせることや中小企業支援策を要求すべきだとしています。
試算を担当した木地(きじ)孝之研究員は「企業が生活保護にも満たない賃金しか支払わなければ、企業の社会的責任を果たしたことにならない」と強調。
政府が生活保護の引き下げを狙っていることについて、藤田宏事務局次長は「労働総研と全労連の共同調査で、日本各地でまともな生活をするためには本来、月23万〜24万円が必要だと試算している。全国平均15万円程度の生活保護基準でいいのかが問われる」と指摘しました。