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2012年5月28日(月)

きょうの潮流

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 わずかな字幕の淡々とした映像。言葉が少ない分、胸に迫ります。2011年度の日本映画復興奨励賞を受賞した記録映画「槌音(つちおと)」です▼舞台は岩手県大槌町。東日本大震災で町民の約11人に1人が犠牲になった町です。被災前の映像と被災後の映像が、交互に映し出されます。祭りのにぎわい、一家だんらん…。その楽しげな声が、被災後の爆心地のような風景にかぶさります▼監督は大久保愉伊(ゆい)さん、25歳。大槌町で生まれ育ちました。大学進学で上京した大久保さんが故郷に向かったのは、震災から2週間後でした。夜行バスだったため、被災した家族の衣類、食料を優先し、カメラを持ち込むことを断念。スマートフォンの動画機能で撮り始めます▼津波で祖父を亡くした大久保さん。撮影は誰かに見せるためではなく、現実を受け入れることができない自分の気持ちを整理するためだったといいます。今ふたたび復興に向け、未来が開けていくような作品を準備中です▼大槌町をはじめとする三陸沿岸は、何度も津波に襲われてきました。古くは平安時代。貞観(じょうがん)三陸地震では、どこが地面と海との境だったのかわからないありさまで溺死する者も千人ほどいた、と当時の歴史書『日本三代実録』に記されています▼自然災害の巣である日本列島で、私たちの祖先は自然と向き合いながら生き延びてきました。「自然ほど伝統に忠実なものはない」と述べたのは物理学者の寺田寅彦さんです。未来に命をつなぐために。記録はそのよすがとなります。


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