「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2012年5月26日(土)

薬害イレッサ 不当判決

大阪高裁 国も販売元も免罪

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

写真

(写真)記者会見する原告の清水英喜さん(左から2人目)と弁護団=25日、大阪市

 肺がん治療薬の抗がん剤「イレッサ」を投与されて死亡した遺族と患者が国と販売元のアストラゼネカ社(本社・大阪市)に損害賠償を求めた薬害イレッサ西日本訴訟の控訴審で大阪高裁(渡辺安一裁判長)は25日、原告の請求をすべて棄却する不当判決を言い渡しました。

 判決は、一審判決が認めたア社の敗訴部分を取り消しました。国の責任についても「イレッサに設計上の欠陥はなく、その販売についても不法行為が成立していないから輸入・販売を承認したことは違法とならない」と、800人を超える副作用死亡被害を出した責任を免罪しました。

 さらに、イレッサの有効性、有用性を認め、製造物責任法に基づく損害賠償請求は理由がないとしています。

 争点の一つ、死にいたる副作用の間質性肺炎についての注意喚起について「指示・警告上の欠陥」があったかどうかについて、「間質性肺炎が警告欄に記載され」ていなくても「重大な副作用欄の4番目に記載されていた」から「担当医が予後良好であるとか、致死的でないと理解するとは考えがたい」と判断して、欠陥はなかったと結論付けました。

 弁護団・原告団は「こうした判決を残すならば、薬害の連鎖を断ち切ることなど到底かなわず大きな禍根を残すことになる。直ちに上告する」と声明を出しました。

 原告の清水英喜さん(56)は「日本には正義がないと感じました。これでは薬害は繰り返されます。上告して最後までたたかいます」と決意を述べました。

東京で弁護団会見

副作用報告の評価低すぎる

 「きわめて不当な判決だ」―。薬害イレッサ西日本訴訟の大阪高裁の判決を受け、薬害イレッサ訴訟弁護団の水口真寿美弁護士は25日、厚生労働省で開いた記者会見で批判しました。

 争点は、間質性肺炎の危険性について添付文書上で注意喚起が十分だったかどうかです。判決は、専門医は添付文書でその危険性を認識できたと指摘。さらに、治験の副作用報告上では、間質性肺炎の因果関係の濃淡があり、添付文書の注意喚起は欠陥があるとはいえないとしました。

 一方、薬害イレッサ訴訟団は、イレッサ承認前後は副作用が少なく安全だと宣伝される中、間質性肺炎の危険性を添付文書に適切に記していないと主張していました。

 水口弁護士は「判決は副作用報告が発している危険性のシグナルを不当に低く評価している」と批判。「承認後の半年で180人もの患者が間質性肺炎で亡くなったのに対し、企業が安全対策をとった後、被害者が激減したことを判決では説明できない」と強調しました。


薬害イレッサ訴訟の経過

 2002年

7月 国の承認を受ける。

12月 さいたま市の遺族が会見。イレッサの危険性と慎重使用を訴える

 2003年

3月 承認課程を検証する「安全性問題検討委員会」の委員12人中11人が承認をした当事者だったことが日本共産党の小池晃参院議員の質問で明らかに

 2004年

7月 京都府の男性の遺族が国とア社に損害賠償を求めて大阪地裁に提訴(西日本訴訟)

11月 近澤昭雄さんが東京地裁に提訴(東日本訴訟)

 2005年

6月 支援する会結成

同月 薬事法違反でア社を刑事告発

同月 米国FDA新規患者への投与禁止

7月 三重県の生存患者実名で提訴

 2007年

2月 厚労省延命効果示せずと発表

 2010年

1月 東西原告団が統一原告団を結成

 2011年

1月 東京、大阪両地裁が和解勧告

同月 原告和解受け入れ

同月 ア社国和解を拒否

2月 西日本訴訟、大阪地裁判決。ア社の責任認める。国は責任認めず

3月 厚労省官僚が肺がん学会などに和解勧告拒否の声明文下書きを作成して要請していたことが発覚

同月 東京地裁が国、ア社の責任認める判決

9月 間質性肺炎死亡者843人に

11月 同控訴審東京高裁、国、ア社の責任認めず

同月 東日本訴訟原告最高裁に上告

 2012年

1月 大阪高裁西日本訴訟控訴審結審


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって