2012年5月24日(木)
がれき処理 復興の大前提
広域処理 安全性確保に万全
共産党県議 斉藤信さんに聞く
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県では、県全体の一般廃棄物の12年分に相当する525万トンもの震災がれきが生じました。県内の処理能力を超えるがれきの存在は復興の大きな障害になっており、県外での広域処理が必要です。この問題について、日本共産党の斉藤信県議に聞きました。(聞き手 細川豊史)
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岩手県 一般廃棄物の12年分525万トン
港湾施設使えず 仮置き場で火災 悪臭・ほこり…洗濯物外に干せず
中心地に15メートルも
震災がれき525万トンは、県全体の一般廃棄物の量に換算すれば12年分ですが、被災地だけで見れば、陸前高田市は255年分(148万トン)、大槌町は93年分(48・2万トン)に上ります。
このがれきの中で、復興が進んでいません。がれきを集積する一次仮置き場が98カ所、一つの被災市町村あたり約8カ所ありますが、それらは津波で被害を受けた市街地の中心部、港湾、運動公園などにあり、復興の中心となるべきところに10メートル、15メートルの高さでがれきが積まれている状態です。
被災地では4万2千人が仮設住宅(みなし仮設を含む)などで暮らし、県内外で6万人近くの被災者が避難生活を送っています。
仕事、住宅の確保、事業所、農漁業の再建が切実な要望で、そのためには津波対策として平地のかさ上げも必要です。しかし、そこにがれきがあるのです。
港湾施設が使えないことも大きな障害です。宮古市では、埠頭(ふとう)で水産加工施設の再建が進められていますが、すぐそばにがれきがあることは衛生上問題です。
がれきは、日常生活の支障にもなっています。山田町や釜石市では昨年10月、がれきの仮置き場で火災が発生しました。夏場を迎えて虫がわくなど衛生面の問題も深刻です。仮置き場から1キロメートル離れていても風でほこりや悪臭に悩まされ、外に洗濯物も干せないという状況です。
小中学校の校庭には仮設住宅があり、運動公園にはがれきが置かれ、子どもたちのスポーツ、クラブ活動も大変苦労しています。
がれきがなくならないと復興の全体が進みません。県は復興を8年、がれき処理を3年という目標を掲げています。がれき処理は、復興の大前提です。
処理能力を超過
県は、県内で最大限処理に努力し、525万トンのうち355万トンを県内で処理する計画を立てています。
民間企業の太平洋セメントで1日の処理能力が最大1000トン。宮古市に日量95トンの仮設焼却炉、釜石市に同100トンの仮設溶融炉を活用し、内陸部の施設もフル活用します。
それでも処理しきれない約120万トンを広域処理でお願いせざるをえません。
広域処理をめぐり、東京電力福島第1原発事故による放射能の問題で住民のみなさんに不安が広がっています。
ここで強調したいのは、私たちがお願いしたいのは、放射性廃棄物ではなく、災害廃棄物だということです。
受け入れ自治体はそれぞれ独自に、安全性を確保し、住民の納得を得られるように基準を設けています。国は焼却前の目安で240ベクレル/1キログラム以下または480ベクレル/1キログラム以下を示していますが、秋田、埼玉、静岡の各県は、搬出時100ベクレル/1キログラム以下を基準としています。岩手県は、受け入れ側の基準に沿って対応しています。
4月から5月にかけての実際の測定値は、陸前高田市で58ベクレル、山田町で16・8ベクレル、野田村で18・4ベクレル(いずれも1キログラムあたり)です。
100ベクレル/1キログラムは、一般廃棄物として扱ってよいとされる、原発事故前からの基準です。岩手県の震災がれきの実測値はこれを大幅に下回っています。
測定と公表必要
がれきに対して放射能の問題で誤解があるのは、政府が原発事故にまともな対応をせず、放射能対策が大変不十分だからだと思います。ここに、国は信じられないという住民のみなさんの不信の根源があると思います。
同時に、岩手県として、もっとリアルタイムにがれきの放射能測定と公表をすべきです。受け入れ側の東京都では搬入前に放射能測定を毎日行い、公表しています。被災地自身としてこうした努力を行うよう、私も県議会で提案しています。
県議会では超党派で他県を訪問し、広域処理への協力を要請しています。私も先日、愛知、三重両県に伺いました。
三重県では、がれき処理のガイドラインを作成し、市長会、町村会との協議、市民のパブリックコメントにもかけて住民の理解をえる丁寧な努力をされているとのことです。
全国のみなさんには、こうした被災地の実態をご理解していただき、1日も早い復興のため、その大前提となっているがれきの処理へのご協力、ご理解をお願いしたいと思います。