2012年5月21日(月)
ゆうPRESS
ILOに若者の声届けます
給料毎年下がる/病休の人何人も/3年以内の離職者多い
国際労働機関(ILO)は、5月30日からスイス・ジュネーブではじまる総会で、若者雇用を主要テーマのひとつに掲げています。全労連青年部や日本民主青年同盟は、ILOの掲げる世界基準の「ディーセント・ワーク」(人間らしい働きがいある仕事)で、日本の若者雇用問題を解決しようと運動しています。(田代正則)
ILOが総会に向けて発表した報告書「若者雇用の危機 いまこそ行動を起こすとき」では、2011年の世界の失業者のうち、4割が若者だったと指摘。若者は、おとなより3倍〜5倍も失業しやすいとし、仕事についている若者でも、派遣や短期契約など解雇されやすい不安定雇用が多く、低賃金だといいます。ワーキングプア(働く貧困層)全体の23%が若者でした。
世界中で、「競争力をつける」という名目の下、政府が社会保障予算を削減し、企業が低い賃金と、自由に解雇できる不安定雇用で労働者を雇えるようにしようとする「新自由主義」経済政策が流行しました。しかし、実際には、貧困と格差を生み、さらに需要を冷え込ませる悪循環に陥ったのです。
とくに被害を受けたのが、若者たちでした。
ILOは経済のあり方を転換し、ディーセント・ワークによって労働者の賃金を上昇させ、安定した雇用を実現し、国民生活を向上させることで内需を拡大して、経済成長の好循環をつくろうと提案。若者雇用を優先課題にしようと強調しています。
ILOは、若者自身の声を政策や職場に反映させることの重要性を強調し、若者の声を寄せてほしいと呼びかけました。
日本民主青年同盟はその呼びかけにこたえ、4800人が集まった全国青年大集会(昨年10月、東京・明治公園)の様子や、ソニー、パナソニックの非正規雇用労働者、就職難の学生の発言を動画にまとめ、ILOに送って実態を告発。全国で若者雇用の実態調査も行っています。
「命が危うい」
調査を行った岩崎明日香民青東京都委員長は、「多くの若者が、このままでは命が危ういと感じているのに、声を出す場がない」と指摘します。
実際に、企業のいいなりに長時間働いたために、就職からわずか2カ月で過労自殺に追い込まれた居酒屋「和民」正社員の女性=当時(26)=など悲惨な事例があとを絶ちません。過酷な労働のため、大卒者の3割以上が3年以内に離職しています。
日本は189のILO条約のうち批准しているのは48にとどまり、なかでも、1日8時間労働とした第1号条約や3週間の有給休暇を原則連続して取得する第132号条約など、労働時間を規制する条約はひとつも批准していません。
就職難も国際的に課題とされています。ILO報告書は、公共職業紹介や中長期の職業訓練を保障して「学校から仕事への移行の促進・支援」を呼びかけ、公共部門で雇用を創出するよう提案しています。しかし、日本の民主党政権は、国家公務員の新規採用削減を打ち出しており、逆行しています。
日本経団連もILO総会に向けて「企業活動の活発化」を要求するだけで、若者にディーセント・ワークを保障する視点がありません。
全労連青年部や民青はILO総会へ代表を派遣し、日本の若者の生の声を届けようとしています。
私が総会にいきます
民青東京都委員長 岩崎 明日香さん
厚生労働省に話を聞いても、「ILOは欧州の影響が強く、日本には当てはまらない」という考えが根強くあります。若者は社会の財産だと位置づけて、生活を守るべきです。国際的な到達点に確信をもって、若者が声をあげるきっかけにしたい。
ILO(国際労働機関)
ILOは国際規模で労働条件や生活水準を改善することを目的に、1919年に創設されました。46年からは国際連合の専門機関として活動しています。
長時間労働の規制や労働組合結成の自由など、国際労働基準(条約と勧告)をつくり、各国の実施状況を監視しています。特徴的なのは、政府、労働者、経営者の3者代表で構成されていることです。日本の労働者代表は連合だけでしたが、2000年から全労連もオブザーバー参加しています。
不当な弾圧を受けた労働者と組合を救済するため「自由の結社委員会」という機関もつくられています。日本から現在、不当解雇を受けた日本航空の労働者が提訴中です。
ディーセント・ワーク
ILOの提唱するディーセント・ワークは、日本語で「人間らしい働きがいある仕事」と翻訳されています。
ディーセント・ワーク実現のために、▽良好な生活水準が保障された雇用▽社会的保護(社会保障および労働者保護)▽政労使の社会対話と3者構成主義▽労働組合結成や団体交渉をはじめ労働者の権利―を戦略課題とし、これらを横断的に、ジェンダー平等(男女平等)を達成することを提起しています。
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