2012年5月21日(月)
主張
G8サミット
緊縮一辺倒から転換迫られた
米欧日など8カ国の首脳が参加して米ワシントン郊外で開かれた主要国首脳会議(サミット)は、世界経済が直面する「逆風」に強い警戒感を示し、「成長と雇用」の必要を強調しました。
財政赤字を抱える先進資本主義諸国では、増税や社会福祉切り捨てなど国民生活を犠牲にした緊縮政策が広まるなか、国民の批判が急速に高まり、政権を揺さぶっています。従来の緊縮一辺倒から成長へと軸足を移す必要をサミットが認めたことは、世界経済の流れの転換が避けられないことを象徴しています。
政権揺さぶる緊縮政策
ギリシャ問題に端を発した欧州の経済危機が新たな深まりをみせるなか、サミット宣言は冒頭で「必要なのは成長と雇用の促進だ」と指摘しました。サミットを主宰したオバマ米大統領も議長声明で「すべての首脳が同意したように、成長と雇用を最優先しなければならない」と強調しました。
大統領選を11月に控え、景気と雇用の回復が再選への決定的な課題になっているオバマ大統領の意向が反映しています。同大統領は「(欧州の)パリやマドリードで企業が活動を縮小すれば、(米国の)ピッツバーグやミルウォーキーの製造業の縮小につながり、その仕事で生きている家族や地域社会はさらに厳しくなる」と、自らの立場を率直に述べました。
欧州では、ギリシャの総選挙で緊縮反対の声が明確に示され、フランスでは成長を重視するオランド新大統領が就任しました。欧州各国に緊縮を迫ってきたドイツのメルケル政権も、地方選挙で手痛い敗北を喫しています。「緊縮から雇用へ」が民意であることは明らかで、サミットはこれを追認したものです。
しかし、サミットは「正しい政策は各国によって同じではない」として、緊縮政策の継続も容認するなど矛盾に満ちています。「成長と雇用」を促進する有効な処方箋も示せていません。成長には「貿易と投資、市場統合がカギだ」としたものの、多国籍企業の利益を優先するなら、貧富の格差の拡大をはじめ先進資本主義諸国が直面している問題はいっそう深まります。サミットは結局、困難を解決する能力をもたない資本主義の姿を裏書きするだけになります。
ギリシャにユーロ圏にとどまるよう求めながら、それに必要なEUの政策転換などの具体策は示しておらず、ギリシャ国民に緊縮継続を迫るだけでは破綻はまぬがれません。成長と雇用を確保しようとすれば、欧州での貿易黒字国のドイツと債務を抱える南欧諸国との構造的な不均衡をただすなど、長期的な政策を示すことも必要です。国家の存在を揺るがすまでに膨れ上がった金融に対して、各国政府が協調して効果的な規制を行うことも不可欠です。
消費税増税を国際公約
サミットでは、日本の存在感のなさが改めて注目されました。世界が緊縮一辺倒から成長への転換を模索するとき、野田佳彦首相は消費税大増税と社会保障改悪の緊縮路線に固執し、それを国際公約しただけでした。
日本経済を成長させるには、家計を温め、内需主導の軌道に乗せることが不可欠です。国民生活を破壊する消費税増税にストップをかけることはその第一歩です。