2012年5月19日(土)
自立・自助が基本 財源は消費税中心
民主と変わらない自民・社会保障対案
自民党が「特命委員会」(15日)でまとめた「今後の社会保障に対する基本的考え方」。野田政権の「社会保障・税一体改革」に呼応してまとめたものです。社会保障のいっそうの改悪を迫りながら、民主党を密室談合に引き込む狙いです。 (西沢亨子)
自民党案は、野田政権の「一体改革」への対案とされています。しかし、考え方も、財源も根幹は「一体改革」と同じです。
「考え方」では、社会保障については自助・自立が「第一」と“自己責任”を強調。その次に「自発的な意思に基づく共助」があり、最後に「公助」の順で政策を組み合わせるとします。
財源は保険料を主体として、公費は限定し、公費財源は「消費税が中心」とします。保険料を負担しない人には給付しない社会保険制度を社会保障の「基本」とし、公費は「保険料負担の適正化などに限定的に充当」と明記しています。
政府の「一体改革」も、「自立・自助を国民相互の共助・連帯の仕組みを通じて支援していくことを基本」「社会保障給付にかかる公費全体について消費税収を主たる財源」(同成案、昨年6月)としています。
自民党は、民主党が09年衆院選マニフェストで掲げた後期高齢者医療廃止や最低保障年金創設の撤回を迫っています。しかし野田政権は、すでにこれらを棚上げしており、自民党案と「一体改革」にほとんど違いはありません。
より改悪迫る
自民党案に“違い”があるとすれば、より強く社会保障切り捨てを迫っている点です。
社会保障の対象を狭く限定する立場から、生活保護について、保護水準や医療扶助の「適正化」=引き下げを「早急に実施」するとしています。さらに、「高齢者、障害者等の就労不可能者」と「就労可能者」に制度を分け、「就労可能者」が就職あっせんを断った場合、給付を減額・停止する制度の検討という、生存権を否定する大改悪を打ち出しました。まったく労働能力のない人に厳しく限定して保護の対象とした戦前の貧民救済策に戻すものです。
核家族化などの中で、子育てや介護を社会全体で支えることが求められていますが、「いたずらにそうした道を選ぶのではなく、家族内の精神的、経済的、物理的な助け合い…を大事にする方向を目指す」として、家族の「自己責任」を求めています。
保険医療や介護保険サービスの対象を狭める方向を掲げ、保険料を納めた者が年金を受給できるのが基本だとして税負担による最低保障年金も否定しています。
密室談合誘う
政府と自民党の間には消費税増税でも、社会保障改悪の方向でも違いがないなか、野田政権は自民党に「密室談合」による法案成立を持ちかけています。
自民党案はこれにこたえるように、「社会保障制度改革国民会議(仮称)の創設」を盛り込みました。社会保障について談合の場を設け、一致しない部分をそこに投げ込んで先送りする一方、これと切り離して消費税増税論議をまとめる狙いが指摘されています。