2012年5月17日(木)
国家緊急権は災害便乗
参院憲法審査会 井上氏が指摘
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参議院の憲法審査会は16日、大震災と国家緊急権について高見勝利上智大学教授、西修駒沢大学名誉教授への質疑を行いました。
高見氏は、東日本大震災に伴う大災害が憲法の想定外だという意見について、憲法に参院の緊急集会の条項が盛りこまれた経過を示し、災害に関する緊急事態は「憲法の想定内だ」と強調。災害対策基本法には「災害緊急事態」の条項もあり、「関東大震災級の災害が発生した場合でも対応しうる」と述べました。また、「緊急事態条項」を求める自民党の改憲草案について「基本的人権は単なる紙切れにすぎなくなる」と批判しました。
西氏が憲法に国家緊急権規定を盛り込むよう述べたのに対し、日本共産党の井上哲士議員は「震災の政府の対応が不十分であったのは、現行法に定められた組織や制度を適切に機能させなかったためであり、改憲と結びつけるのは『災害便乗』だ」と指摘しました。
井上氏が「憲法に『非常事態』条項がなかったために対応が不十分だったという事例があったのか」と質問すると、西氏は「規定があったら(政府の)危機管理意識は違っていた」としつつ、「今回は対応できた」と認めました。
井上氏は金森徳次郎憲法担当大臣が憲法制定議会で行政当局にとって重宝な緊急権ではなく、民主政治の根本原則の尊重を強調していることについて質問。高見氏は「憲法作成の基本的理念は民主主義の強化であり、政府をコントロールする統治機構の整備であった」と緊急権が盛りこまれなかった背景について述べました。