2012年5月14日(月)
「大学統廃合」要求する財界
財界の要求実行に前のめりな野田内閣に、財界側の注文も露骨さを増しています。最近では「大学の統廃合」まで公然と求めるに至っています。
「次世代の育成」などを議題とした4月9日の政府の国家戦略会議(議長=野田佳彦首相)に、米倉弘昌日本経団連会長、長谷川閑史経済同友会代表幹事ら民間議員5人連名の提案文書が提出されました。提案文書では、国立大学法人の運営費交付金や私学助成について「抜本的にメリハリ」をつけた配分を要求。こうした手法も「活用しながら」、「統廃合等の促進を含む大学改革を促進」するよう迫っています。
そこには、「世界で活躍し、イノベーションを起こす人材」が必要だなどとする産業界の要求と、大学が育成する学生像とに「ミスマッチ」が生じているとして、海外に拠点を広げる大企業に使い勝手のよい人材を供給するよう、高等教育を再編したいという財界のねらいがあります。
国立大学運営費交付金や私学助成は大幅削減が続けられる一方で、今年度予算に「国立大学改革強化推進事業」(138億円)が新設され、文科省内にタスクフォース(特別任務のプロジェクト・チーム)を設けて「大学群」創出など大学再編を推進させようとしています。提案文書は、予算面でもこうした大学間の選別をさらに強め、経営的にも大学を追い詰めて統廃合に向かわせるよう、国に促したものです。
会議では、欠席した米倉会長のコメントも紹介され、「現下の課題は『戦略』ではなく『実行』にある」などと、政府にハッパをかけています。
これら民間議員の要求をうけ、野田首相は、5月に文科省の「取組方針」を報告するよう、平野博文文科相に指示しました。日本の学術の発展を阻害する危険な動きです。(清水博)