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2012年5月13日(日)

主張

原発再稼働

なし崩しの積み上げは危険だ

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 東京電力福島原発事故を収束させる見通しが立たず、全国で50基ある原発がすべて運転を停止するなど、原子力発電の行方についての議論がいっそう高まっています。一日も早く原発からの撤退を決断し、自然エネルギーや省エネルギーを柱に、エネルギー戦略を確立することが急務です。にもかかわらず野田佳彦政権は、「原発稼働ゼロ」を抜け出すために関西電力大飯原発などの再稼働を画策し、東京電力の経営問題に絡めて柏崎刈羽原発の再稼働を持ち出すなど、前のめりで原発再開へ向けた動きを強めています。なし崩しの既成事実積み上げは危険です。

経営難や電力不足口実に

 野田政権は先週、東京電力などが作成した特別事業計画を認定、1兆円を超す公的資金の投入や家庭用電気料金の値上げとともに、柏崎刈羽原発を2013年4月に再稼働することを計画に盛り込みました。枝野幸男経済産業相は、再稼働を決めたわけではなく「仮置きした」と説明しますが、「原発ゼロ」を求める国民世論に挑戦しているのは明らかです。

 野田政権は、今年夏の電力需給について検証する有識者会議でも、大飯原発が停止したままだと関西電力管内は「電力不足」になるが、大飯原発3、4号機を再稼働すれば不足は解消するとの試算を持ち出しました。大飯原発3、4号機は、野田政権が地元の福井県やおおい町の説得を続けていますが、再稼働が決まったわけではありません。電力不足の解消を理由に再稼働を持ち出すなど、国民世論を切り崩す狙いです。

 東日本大震災から1年2カ月、福島原発事故の被害の深刻さがいよいよ浮き彫りになっているのに、口先では「脱原発依存」などといいながら原発からの撤退を決断するどころか、なし崩しで再稼働に向けた既成事実を積み重ねる民主党政権の態度は、国民に不誠実で無責任なものです。政府はこの夏に向け長期的なエネルギー戦略を検討していますが、原発は「基幹電源」だという議論までおおっぴらに出だしています。福島原発事故の重大さをわきまえない言語道断な態度です。

 東電福島原発はまだ重大事故に至った原因の究明さえ尽くされておらず、破壊された原子炉から核燃料を取り出し廃炉にもっていくにはまだまだ長い年月がかかる見通しです。全国の原発の地震や津波に対する安全基準や万一の場合の避難計画の見直し、原発を管理する肝心の規制機関の確立もこれからです。原因究明なし、安全対策なし、規制機関なしで原発を再稼働させることなど、許されないのは明らかではありませんか。

撤退決断してこそ対策も

 原発再稼働に国民の納得を得る見通しもないまま、ずるずると既成事実を積み重ねるだけというのでは、国民の不安を逆に高めるばかりです。原発再開と電力不足をはかりにかけるのではなく、一刻も早く撤退を決断し、当面必要な需給対策を講じることこそ政府の責任です。

 原発はもともと、現在の技術ではコントロールしきれない危険なエネルギー源です。停止中の原発を再稼働するのではなく、原発から撤退し、自然エネルギーや省エネルギーを柱にしたエネルギー戦略を確立することこそ、国民の安心にとって不可欠です。


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