2012年5月11日(金)
子育て新システム3法案
高橋議員の質問
衆院本会議
日本共産党の高橋ちづ子議員が衆院本会議(10日)で行った質問は次の通りです。
日本共産党を代表し、子ども・子育て新システム3法案について質問します。
増える待機児童 解消策にならず
子ども政策に大事なことは、子どもの権利条約がうたう「子どもの最善の利益」を実現することです。保育指針でも「入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない」と明記されています。
新システムの原型は、自公政権から検討されてきた「保育制度改革」です。営利企業の参入を広げる「保育の市場化」と「保育も金次第」という世界に変えてしまうもので「子どもの最善の利益」とは相いれない制度です。
第一は、待機児童の解消策になるかという点です。「保育所が見つからず仕事をやめた」など、悲痛な声が上がっています。保育所を利用する児童は212万人、認可外施設の入所児童は18万6千人もおり、年々増えています。待機児童は依然として2万6千人もいます。
待機児童ゼロ作戦から10年、民間保育所が3192カ所増えましたが、その3分の2以上は公立保育所が民営に置き換わっただけです。しかも05年調査では約16万人も定員を上回って受け入れていました。保育所をつくるのではなく、民営化や要件緩和でしのいできたのが実態です。
国は公立の建設費補助をやめ運営費も一般財源化するなど、公的保育から手を引いてきました。新システムは「市町村が保育のニーズを把握する」といいますが、政府は待機児童数を把握し、解決に必要な認可保育所をつくるべきです。
第二は、公的保育の実施責任についてです。児童福祉法第24条は、市町村に保育の直接的な実施義務を明記しています。政府はこれを削除し、保育を「確保するための措置」を講じなければならないとします。市町村の役割は後退しないと説明しますが、ではなぜ削除するのですか。
新設される総合こども園には、待機児童の8割を占める3歳未満児の受け入れを義務付けていません。「幼保一体化」で待機児童が解消するわけではないのです。
政府は「保育の質は落とさない」と説明しています。しかし、保育の供給が需要に追い付かなければ、狭い部屋を利用した小規模保育でも認めていかざるをえなくなるのではありませんか。今でも詰め込みなのに、基準を自治体の条例にゆだね引き下げることは断じて認められません。
第三に、保育が介護保険のような制度になることです。保護者は保育の必要度について市町村から認定を受けますが、入所するには保育所と直接契約を結ぶ必要があります。
介護保険は、要介護度で利用限度が決められ、上回れば自己負担、あるいは利用限度枠内でも利用料を払えなければ使えないという問題があります。保育は「短時間」と「長時間」の二つのタイプしかありません。短時間と長時間はどこで区切るのか。パート労働者が短時間と認定された場合、通勤時間などで利用時間をはみ出す場合はどのようになるのか。
保育料は「応能負担」といいます。しかし「パートの給料が全部消える」と悲鳴があがるほど、保育料は高すぎます。ほとんどの世帯が児童手当から天引きされ、不足分の請求書が届くだけではありませんか。これでは子どもを産み育てる希望がもてません。
優先入所が必要な場合、市町村があっせんするといいますが、入所できる担保がありますか。保護者は、所得や障害など、優先入所が必要な事情を書いた認定証を持って保育所を回らなければなりません。保護者が保育所を選ぶのではなく、逆に保育所から選ばれる側になるのではありませんか。
営利企業に開放 保育の質が低下
第四は、保育の市場化です。株式会社をはじめ多様な事業者の参入を認め、株式配当も認めます。利益を出そうと思えば、人件費を削るか質を落とす以外にありません。営利企業と保育とは絶対に相いれません。
第五は、総合こども園は、3歳以上児に質の高い学校教育を提供するとされました。幼児期にどういう保育・教育を保障するのかは、幼稚園、保育所ともに積み上げてきた歴史と経験を尊重し、専門的、国際的な知見も踏まえて検討するべきです。拙速な「幼保一体化」は禍根を残しかねません。
新システム法案は、消費税増税がスタートしなければ施行されません。子育て世代の貧困率は12・7%、母子家庭では48%にも及びます。子育ての充実策に充てるとしながら、子育て世代に増税が直撃するというのでは、少子化に拍車をかけることになりかねません。子育ての安心と希望を奪いながら大増税を押し付けることは許されません。