2012年5月2日(水)
政府円高対策 大企業の合併・買収など支援
是正効果なく 雇用削減も
野田佳彦首相は「歴史的な円高と長引くデフレを克服する」といいます。しかし、政府の円高対策で目立っているのは、「円高メリットの徹底活用」と称した大企業の海外進出支援です。(中川亮)
政府の「円高対応緊急ファシリティ」は、外貨を使って日本企業による海外企業の合併・買収(M&A)などを支援するというもの。野田首相が財務相時代の昨年8月に打ち出されました。
融資を行うのは、財務省所管の国際協力銀行(JBIC)。外国為替資金特別会計から1000億ドル(約8兆円)を使って低利融資を行います。経団連は会員企業を集めて説明会を開き、財務省の担当者が「企業の海外活動を支援する有効なツールとなるので、ぜひご活用いただきたい」と求めました。
資金力は十分
これまでの融資額は11件で約3440億円にのぼります。恩恵はすべて、資本金10億円以上の大企業が占めています。(表)
ソニーは、携帯電話会社買収で約656億円、東芝も電力メーター等製造・販売会社の買収に約480億円の支援をそれぞれ受けました。住友金属鉱山も関連会社と共同で行う銅鉱山開発事業で約560億円の支援を受けています。
しかし、ソニーがため込んだ利益剰余金は1兆5662億円(2011年3月期決算)、東芝の利益剰余金も5515億円など、各社とも十分な資金力を持っています。
単なる補助金
日本共産党の大門実紀史参院議員は「ドル資金を供給すれば円売りをしなくなり、円高対策の効果を打ち消してしまう」と指摘しました(3月27日、財金委)。安住淳財務相が「国富の増大に資する」と正当化したのに対しても、大門氏は「特定大企業への単なる補助金だ。大企業のM&Aを公的に支援することに何の公共性があるのか」と批判しました。
実際、ソニーは4月12日、グループ全体で1万人にのぼる人員削減計画を発表。円高対策に盛り込んだ雇用対策に逆行する事態になっています。
円高は依然として高水準が続いています。円高ファシリティの効果は「2階から目薬をさすようなものだ」といわれていた通りの状況です。
日本共産党は、円高対策で必要なのは、日本経済を“外需頼み”から家計と内需主導に改革することだとして、非正規労働者の正社員化、最低賃金の抜本的引き上げ、大企業による下請けいじめの是正などを主張しています。円高の要因になっている為替投機に対しても、投機を規制するための通貨取引課税の創設を含め、世界各国に働きかけることが重要だとしています。
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