2012年5月1日(火)
メキシコ大統領選まで2カ月
「麻薬戦争」・貧困が争点
メキシコ大統領選挙が2カ月後に迫りました(7月1日投票。任期6年)。死者5万人の「麻薬戦争」や貧困問題などが争点にあがっています。(松島良尚)
世論調査によると、野党第1党・制度的革命党(PRI)のペニャ・ニエト候補が与党候補に大きな差をつけています。
同国では2000年の大統領選挙で71年間政権の座にあったPRIが敗れ、中道右派・国民行動党(PAN)が政権につきました。
PRIはメキシコ革命の中で民族主義的勢力が結成しました。民主化を促進した側面もありますが、次第に利権政治や腐敗、不正選挙が横行。新自由主義路線も取り入れました。国民のうっせきした不満がPAN政権を誕生させ、06年の選挙でもPANが勝利しましたが、今回はPRIが12年ぶりに政権を奪還する勢いです。
与党のバスケス・モタ候補が苦戦を強いられているのは、カルデロン大統領が軍を投入し、米国が装備などで支援をしている麻薬対策で逆に治安が悪化しているからです。
市民も巻き込んだこの5年余の犠牲者は約5万人。「麻薬戦争」「内乱状態」といわれ、身の危険を理由に自治体首長が不在という事態も生じています。
メキシコ国立自治大学のナロ学長は、「現在の対策は機能していない」と指摘。国連中南米カリブ経済委員会のバルセナ事務局長は「社会的不平等が麻薬犯罪の温床だ」と強調します。
しかし、バスケス・モタ候補は、「犯罪の広がりと深刻化を阻止してきた」と現政権の取り組みを積極的に評価しています。
ペニャ・ニエト候補は、暴力とのたたかいのカギは経済成長と雇用促進にあると主張。治安対策の戦略を見直すといいます。
メキシコは米国発の経済、金融危機の影響を中南米のどの国よりも大きく受けました。北米自由貿易協定のもと、輸出の8割以上が米国向けという体質がすすんだ結果です。農業の衰退も顕著です。
国連によると、メキシコの貧困人口は09年の34・8%から10年には36・3%に増加。この問題も与党の苦戦につながっています。
中道左派・民主革命党(PRD)のロペス・オブラドール候補は、2度目の出馬。暴力拡大の大本には貧困と失業を増大させた新自由主義の問題があるとして、現行の経済モデルを国民本位に転換することを主張する唯一の候補です。前回選挙では現大統領と大接戦を繰り広げましたが、選挙不正があったとして結果を認めず、道路封鎖などの抗議行動が一部市民の不評を買いました。
こうした経過に加え、今回の候補者選出の過程でPRDの内紛があらわになりました。PRDの影響力低下によって、政権批判がPRI候補支持に流れやすい状況が生まれているようです。
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