2012年4月27日(金)
主張
小沢氏判決
秘書有罪、本人無罪で終わらぬ
政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表に対し、東京地裁は無罪の判決を言い渡しました。
同じ虚偽記載では、会計責任者などを務めた小沢氏の秘書3人に対し、昨年すでに有罪の判決が言い渡されています。秘書は逮捕・起訴され有罪になり、議員本人は検察審査会で強制起訴されても無罪というのは国民に通用するのか。判決は「無罪」でも、小沢氏が国会議員として疑惑に答え、政治的道義的責任を明確にする責任は、いよいよ重大です。
資金の出所隠すため
事件は小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐるものです。「陸山会」が2004年、東京・世田谷区に約4億円の土地を購入した際、実際には小沢氏が用立てた資金で購入したのに同年の政治資金収支報告書には記載せず、年間450万円もの利子を支払って銀行から4億円の融資を受けるなど、不透明な資金の出し入れがあったというものです。
政治資金規正法は、政治団体などの政治活動が「国民の不断の監視と批判の下に」置かれるために、政治資金の公開を求めているものです。政治家が政治資金をめぐって疑念をもたれること自体重大であり、国会の政治倫理綱領は自ら説明責任を果たすことを求めています。小沢氏は事件発覚後、ただの一回も国会で説明していません。小沢氏が国会での証人喚問に応じ、疑惑に答えるのは当然です。
秘書3人への有罪判決に続き、小沢氏への判決も政治資金収支報告書の虚偽記載があったことを認め、その動機は小沢氏から資金が出ていたことを隠すためだと指摘しました。小沢氏は秘書から政治資金収支報告について報告を受け了承していたが、虚偽記載についてまで「共謀」はなかったというのが無罪判決の論理です。
小沢氏はこれまで、政治資金規正法の虚偽記載は「形式的」なものだといいのがれ、収支報告書の作成は「秘書任せ」だったと自らの関与を否定してきました。判決は、こうした主張がなりたたないことを示すものです。もともと政治資金規正法の政治家本人への責任追及は不十分だとの批判があります。形ばかりの「無罪」判決で小沢氏の責任が免れるなどと考えればそれこそ大間違いです。
いったいなぜ土地購入が小沢氏からの資金によるものだということを隠そうとしたのか。ここにこそ“核心中の核心”があります。今回の判決はふれていませんが、昨年の秘書への判決はゼネコンからの闇献金が含まれていることを「追及・詮索」されたくなかったからだと指弾しました。公共事業の発注をめぐるゼネコン献金は税金の還流です。核心部分について小沢氏は説明すべきです。
市民による起訴の重み
小沢氏の起訴は、検察が不起訴にしたものの市民が参加した検察審査会によって「起訴相当」と議決されたものです。市民が参加した強制起訴の重みを受け止める必要があります。判決が検察に対し、事実に反する捜査報告があったと批判する一方、起訴の議決自体は有効としたのも重要です。
小沢氏は民主党の実力者です。小沢氏に説明責任を果たさせ、政治的道義的責任を明確にさせるうえで、野田佳彦首相と民主党の責任もあいまいにすまされません。