2012年4月22日(日)
町の再生に力を
福島 浪江町民 国会事故調と対話
真相究明求める 情報伝達に不備 医療無料を望む
国会に設置された東京電力福島第1原発事故の検証委員会(国会事故調、黒川清委員長)は21日、福島県浪江町の住民を受け入れている二本松市で第10回委員会を開き、馬場有(たもつ)浪江町長や避難住民らの意見を聞きました。
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馬場町長のほか、商工会や農協などの代表が意見陳述。委員会後は、町民181人と黒川委員長、委員7人による対話集会が開かれました。
馬場町長は、避難で町民の捜索を打ち切らざるをえなかった経緯を説明。放射性物質の拡散を予測する政府のシステム「SPEEDI」の情報が手に入らず避難の過程で無用な被ばくを強いられたことや、テレビのほかは政府からも東電からも避難を求める連絡がなかったと告発しました。
また、町民が県内外に分散し、地域の絆の維持が「大変厳しい」と報告。「原発事故がすべてを崩壊させたという認識を深めて、原因究明を徹底し、町の再生に力を貸してほしい」と求めました。
町PTA連絡協議会の佐藤隆会長は、「避難所ではヨウ素剤を飲ませる基準が分からず、子どもたちに飲ませてあげられなかった」と振り返りました。
商工会や農協からは、迅速な賠償や、賠償金の課税免除の要望が出されました。相馬双葉漁業協同組合請戸(うけど)支所の叶谷守久(かのうやもりひさ)支所長は、「母なる海を汚すな。海は放射能の最終処分場じゃない」と、抗議しました。
対話集会では、「何年も後にがんになるかもしれない。子どもがおとなになっても無償で医療を受けさせてほしい」と健康管理を求める声や将来への不安が語られました。
日本共産党の馬場績(いさお)町議は、町民から寄せられた相談を例に避難生活の過酷さを語り、精神的被害を含む完全賠償の必要性を報告書に盛り込むように主張。国際原子力機関の勧告を受けながら過酷事故の対策を講じなかった国の原子力安全行政の解明が必要だと指摘しました。
再稼働に批判
「同じ思い二度と」
21日の国会事故調では、関西電力大飯原発の再稼働をすすめる野田政権への批判も相次ぎました。
浪江町PTA連絡協議会の佐藤隆会長は、「おとなの責任として、(事故が起きたら)止められないものは動かさない。原発が無くても暮らせる状況をつくる。私たちの被害を踏まえればそれ以外の結論はない」と強調。
町行政区長会の鈴木充(みつる)会長は、「いったん事故を起こすと多くの人々の平穏な暮らし、雇用の場を奪い、地域の絆を断ちきる。全国の原発立地市町村に同じ思いをさせることがないように」と語りました。
委員会終了後には、馬場有町長が記者団の質問にこたえ、「再稼働できる状況ではないでしょう。(福島第1原発)事故の検証すら終わっていないのだから」と語りました。