2012年4月21日(土)
障害者総合支援法案強行
司法の場での和解合意をほご
民・自・公3党が18日に衆院厚生労働委員会で強引に可決した「障害者総合支援法案」。民主党政権は、障害者自立支援法を廃止し、それに代わる新法がこの法案だと言い張っています。しかし、もともと政府自身が「障害者自立支援法の一部改正案」としていたように、ごく一部を変えるだけのもので、障害者自立支援法を恒久化するものです。
障害者自立支援法は自公政権によって2006年4月に施行されました。障害者が生きるために必要な支援を「益」だとして1割負担を課し、障害が重いほど負担が重くなる「応益負担」を持ち込みました。これへの怒りから、08年には全国14カ所で違憲訴訟が起き、廃止を求める運動が広がりました。
廃止公約し和解
民主党は、これらの動きに押され、09年のマニフェストで同法の「廃止」を掲げて政権交代を果たしました。長妻昭厚労相(当時)は就任早々「廃止」を表明して、違憲訴訟団との和解を模索。訴訟団は、同法の廃止と新法の制定を確認した「基本合意」文書を取り交わし、国と和解しました。
ところが「総合支援法」は「応益負担」の枠組みを残したまま。家族の収入を含めて負担を課す仕組みもそのままで、障害を自己責任・家族責任としている点で自立支援法の根幹を残しています。
障害者の求める原則無料化に背を向け、すべての障害者を法の対象にすることも、利用を制限する「障害程度区分」の廃止も盛り込んでいません。
にもかかわらず、小宮山洋子厚労相は、応益負担についてはすでに「抜本的な改正が行われた」(18日の衆院厚労委)と主張。「名称や目的規定を変更したので、障害者自立支援法の廃止になる」と言い切りました。
裏切りの先例に
障害者自立支援法の廃止棚上げは、政党が選挙公約を破ったというにとどまらず、国家として司法の場での約束を踏みにじる重大な裏切りです。民主党政権の詭弁(きべん)を許せば、裁判を終わらせるため、司法に訴えた国民をだますかのような国のやり方の先例になりかねません。
さらに民主党政権は、障害当事者が参加する審議会を設けて新法の検討をゆだねておきながら、そこでまとまった新法の「骨格提言」をほとんど無視しています。
障害当事者の願いを裏切る法案を提出したうえ、民主党政権は、自公との談合でわずかな審議で自立支援法の恒久化を狙っています。法案が可決された衆院厚労委での審議はわずか3時間。「新法というなら新法らしく時間をとるのが当然だ。3時間の審議とは、新法でないのを自ら露呈している」(元障がい者制度改革推進会議議長代理の藤井克徳氏)との声が上がるのは当然です。
障害者らは、法案の徹底審議を求め来週も、連日国会に詰めかける行動を予定しています。参院では「良識の府」らしく徹底審議が求められます。(鎌塚由美)