2012年4月18日(水)
主張
障害者総合支援法案
約束を守り新法を出し直せ
障害者の生きる権利を侵害するとして批判された「障害者自立支援法」を存続させる「障害者総合支援法案」を民主党政権が今国会に提出し、自民党、公明党と一部修正で合意し短時間の審議で成立させようとしています。民主党政権が「廃止」を約束したはずの悪法を、わずかな手直しをしただけの改定でごまかし、恒久化させることは絶対に許されません。改定案は撤回し、障害者を権利の主体へ転換する新しい総合福祉法案を国会へ出し直すべきです。
「応益負担」は変わらず
民自公3党が修正合意した改定案は、障害者とその家族の願う新法からあまりにも大きくかけ離れた内容となっています。重い負担で障害者と家族の生活を直撃した自立支援法(自公政権が2006年施行)の根幹部分をそっくり維持しているためです。
障害を「自己責任」として、生きるために不可欠な支援に原則1割の「応益負担」を強いる苛酷な仕組みは温存されました。障害者本人の必要性を考慮しないで機械的にサービス内容を区分し、利用抑制手段になっている「障害程度区分制度」も存続します。障害者の範囲に「難病」を加えましたが、すべての難病が対象にはならず、新たな差別が生まれるおそれがあります。「法の目的や名称を含めて変えていくので事実上、自立支援法は廃止」(小宮山洋子厚労相)などと居直って強行することは国民にたいする重大な裏切りです。
自立支援法の廃止は、世論と運動の広がりのなかで、民主党政権が障害者と国民との間に結んだ「約束」だったはずです。障害者ら71人が全国14の地方裁判所に尊厳と生きる権利を奪われたとして違憲訴訟を起こすなど自立支援法廃止を求める国民的なたたかいが広がるなか民主党政権は10年、原告・弁護団と同法廃止と新法制定を約束する「基本合意」を交わし、訴訟は和解・終結しました。自立支援法が障害者の尊厳を深く傷つけたことを政府自身が認め、「反省」を表明したことは画期的なことでした。
さらに政府に設置された「障がい者制度改革推進会議」の下の「総合福祉部会」は障害者が当事者として参加し新法制の議論をすすめました。昨年8月に発表した「骨格提言」は、障害者を保護の対象から権利の主体へ転換することや、障害者支援を「社会的・公的な責任に切り替える」ことなどを理念に打ち出す重要なものでした。障害者権利条約と「基本合意」を基礎にして▽障害のない市民との平等と公正▽制度の谷間や空白の解消▽ニーズに合った支援サービス▽安定した予算の確保―など今後の障害者福祉の進むべき方向も具体的に示したものでもあります。
国民の声を受けとめよ
「骨格提言」をことごとく無視し、障害者が求める内容とはかけ離れた改定案に固執する民主党政権には、まったく道理がありません。障害者から「いったい何を信じたらいいのか」と怒りの声が出されるのは当然です。
障害者の声を踏まえた総合福祉法を求める地方議会意見書は180以上で可決され、大きく広がっています。17日の衆院厚労委員会で審議入りし、短期間で採決するなどは論外です。改定案成立は断念すべきです。新法実現の運動がますます重要となっています。