2012年4月17日(火)
米国孤立 中南米の「乱」
キューバ排除にレッドカード
米州サミット閉幕
南米コロンビアのカルタヘナで開かれていた第6回米州サミットが15日、閉幕しました。会議から排除されてきたキューバの参加問題では、参加を支持する中南米諸国と反対する米国の対立で合意が得られず、最終文書も採択できませんでした。
前回のサミット(2009年)でも、キューバ問題をめぐり、一部の国が最終文書への署名を拒否しましたが、最終文書そのものが採択できなかったのは初めて。ロイター通信は「ワシントンの影響力低下を浮き彫りにした」と報じています。
14日から行われた会議では、ベネズエラ、ボリビアなど米州ボリバル同盟(ALBA)加盟国が、次回以降のキューバの参加を明確にするよう強く要求。ボリビアのモラレス大統領は同日の会見で、「米国に対する中南米の反乱」が始まったと語りました。
南米では米国からの最大の軍事支援を受けている議長国コロンビアのサントス大統領も、キューバの孤立化や封鎖は「効果的ではなかった」、「キューバが次回のサミットに参加することを希望する」と発言。メキシコなど従来親米国とみなされてきた国々からもキューバ参加支持の表明が相次ぎました。
これに対し米国は、キューバ国内の民主主義体制が不十分だとの理由で参加に反対する態度に固執。オバマ大統領は会議後の会見で「キューバ国民が自由に指導者を選び、世界経済と国際機関に全面的に参加する時を望んでいるが、まだそこには至っていない」と説明しました。
報道によると、米国に同調したのは同盟国のカナダだけ。米国が圧倒的多数の中南米側の声に反して「拒否権」を発動し、文書採択を流産させた形となりました。
地元コロンビアのエルロサリオ大学のビセンテ・トリホス教授(国際政治)は、今回の会議を受けて「米国の孤立」がさらに進むとの見通しを表明。政治家の間からは、次回サミットの開催さえも危ぶむ声が上がっています。 (菅原啓)
米州サミット 米州自由貿易地域(FTAA)の創設を目指し、米国が呼び掛けて1994年に始まった首脳会議。米州機構(OAS)に加盟する米国、カナダ、中南米33カ国の計35カ国に参加資格があります。これまでほぼ3年おきに開かれてきました。会議の目的は「米州各国が直面する現在と未来の課題に対処すること」(同会議のホームページ)とされます。