2012年4月17日(火)
主張
郵政民営化法改定案
1700郵便局の存続が危ない
民主、自民、公明3党が共同提案した郵政民営化法改定案は11日に衆院を通過し、審議の舞台は参院に移ります。
改定案は1700余もの郵便局の存続の保障をなくし、貯金と保険の全株処分を掲げています。
小泉民営化さらに改悪
郵政民営化は2005年に小泉・自公政権が強行しました。郵政事業は07年から「日本郵政」「日本郵便」「郵便局会社」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」の5社に分割・株式会社化されています。貯金と保険はユニバーサルサービス(あまねく全国で公平に利用できるサービス)の提供義務をなくし、全株を処分する枠組みです。
改定案は「郵便局会社」を「日本郵便」に統合して4社体制に再編します。「日本郵政」と「日本郵便」には郵便、貯金、保険を「郵便局」で提供するユニバーサルサービスの義務を課しています。しかし、民営化法では郵便を扱う営業所を郵便局と定義していたのに、改定案は郵便に加えて貯金と保険の三つとも扱う営業所だけを「郵便局」と定義しました。これでは保険や貯金を扱っていない営業所は「郵便局」とはみなされなくなり、ユニバーサルサービスとしての設置義務から除外されることになります。
利益優先の株式会社化を進める郵政民営化法では、かろうじて過疎地は「郵便局ネットワークの水準を維持する」(総務省令)と設置義務が明確にされました。その対象である7500余の郵便局のうち保険や貯金を扱っていない郵便局は1700余に上ることが明らかになりました。これらの多くの郵便局は保険窓口がないだけで、貯金窓口はあるところです。
これらの郵便局の廃止は阻止できるのかとただした日本共産党の塩川鉄也議員に、森田高(たかし)総務政務官は「省令改正」で対処したいと答えました(11日、衆院郵政改革特別委)。改定案そのものには廃止に対する歯止めがないことを認める答弁です。「省令改正」といっても、その改正案さえ示されていません。小泉民営化の見直しどころか、小泉民営化と比べてもいっそうの郵便局ネットワークの後退につながる重大な改悪です。
改定案は貯金、保険の2社にユニバーサルサービス義務を課していません。政府が10年に国会提出したものの成立しなかった郵政「改革法案」は「日本郵政」が2社の株の「3分の1超」を保有するとしていました。当時、政府は、これでユニバーサルサービスを確保できると強調しました。「3分の1超」の株の議決権を使ってユニバーサルサービスを定めた2社の定款変更を拒否できるという説明です。
改定案は、この「3分の1超」の規定すら削除し、全株処分をめざすとしています。金融2社が単なる利潤第一の民間金融機関化することへの「歯止め」もなくし、09年末から凍結された株式処分を解凍することになります。
公共サービスの再生を
改定案は参院で徹底審議し、廃案にすべきです。
郵政事業は地域社会を支える上でも大災害のときにも、なくてはならない公共サービスです。貯金と保険にもユニバーサルサービスを義務付け、分社化をやめて一体経営を取り戻すとともに公的事業体として再生を図ることが切実に求められます。