2012年4月11日(水)
主張
北朝鮮「ロケット」計画
やみくもな軍事的対応でなく
北朝鮮が、「実用衛星」打ち上げを理由にした「ロケット」発射を計画し、準備を進めています。
これは、全会一致で採択された国連安全保障理事会決議1874号に違反するものです。同決議は「弾道ミサイル」であれ、その技術を使用した「人工衛星」であれ、発射の中止を求めています。北朝鮮が、国連安保理決議に反して2度目の核実験を強行したという深刻な事態を踏まえたもので、「主権国家の権利」などという北朝鮮の言い分は通用しません。北朝鮮は発射計画を中止すべきです。
一方、日本政府が「ロケット」発射に備えるとして沖縄などでやみくもな軍事的対応を強めていることにも国民の批判と不安が高まっています。
政府は、地域住民から反対の声が上がっていた新たな自衛隊の配備・体制強化計画を、この機会を利用して、進めるようなことはすべきではありません。
自制求める外交努力を
北朝鮮の「ロケット」発射計画にたいしては、周辺諸国をはじめ世界各国からも相次いで「自制」を求める声が上がっています。8日開かれた日本、中国、韓国の外相会談でも、北朝鮮の自制を求め、最大限の外交努力を継続することで一致したと伝えられています。
北朝鮮の「ロケット」発射は、今週後半12日から16日の間に計画されていますが、北朝鮮が「ロケット」発射を思いとどまるよう、外交的努力をつくすことが求められます。
同時にいま見落とせないのは、日本政府が北朝鮮の「ロケット」発射に対応するとして、海上発射型の迎撃ミサイル「SM3」を搭載したイージス艦や航空機を東シナ海や日本海に出動させ、万一「ロケット」が日本に落下した場合を想定した「破壊命令」を発して沖縄本島や宮古、石垣両島、首都圏各地に地上発射型の迎撃ミサイル「PAC3」を配備するなど、軍事的対応を強化していることです。
今回、沖縄に配備された自衛隊員は950人。ヘリ数機の配備も含めた大がかりなもので、自衛隊の基地がない石垣島や与那国島にも配備され、基地の外では通例見られない武器を携行した隊員が警護にあたるという異常なものとなっています。
こうしたものものしい自衛隊の配備は、地元の人たちに「いまにも戦争が始まるようだ」など不安の声を巻き起こしています。地域の住民が今回の配備を、本格的な配備のための“地ならし”ではないかと懸念するのも当然です。
専門家からは、「軌道を外れた秒速数キロから10キロで落下してくるミサイルを迎撃できるはずがない」(孫崎享・元外務省国際情報局長)との指摘も出ています。
韓国では、日本政府の動きや対応に、「過剰ではないのか」との冷ややかな見方がでており、「迎撃ミサイルの配備や警備体制の点検まで日本は少し行き過ぎた反応を見せている」との懸念の声も報じられています。
政府はこうした声にも耳を傾けるべきです。
日本政府の対応問われる
もともと北朝鮮の「ロケット」発射は、外交的に道理を尽くして中止をさせるべきものです。軍事で身構えようという日本政府の態度は、問題の外交的解決そのものを妨げることにもなりかねません。