2012年4月4日(水)
主張
南海トラフ地震
地震列島の原発やはり危険だ
内閣府の検討会が、東海から九州にかけての太平洋側海底に横たわる「南海トラフ」で連動型の地震が起きた場合、10県で震度7の揺れ、6都県で20メートル以上の津波に襲われるところが出てくるという見通しを公表しました。
深刻なのは震源域内にある中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)など原発への影響です。浜岡原発では予想される津波の高さが21メートルと、現在建設中の防波壁の高さを超えます。地震列島の原発の危険性がいよいよ明らかです。
地震や津波の想定見直し
南海トラフは西日本が載るユーラシアプレート(岩板)に南東からフィリピン海プレートが沈み込んでいる場所です。トラフ沿いに東海、東南海、南海などの地震が繰り返し発生しています。内閣府の検討会は東日本大震災を受け、これらの震源域が連動し、最大限の地震が起きた場合の被害想定を検討しました。予想される「西日本巨大地震」の規模はマグニチュード(M)9・0となり、各地の震度や津波の想定はこれまでより引き上げられました。
影響をとくに強く受けるとみられるのが、浜岡原発と四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)です。浜岡原発は東海地震の震源域の真上に位置します。南海トラフでM9の地震が起きた場合、浜岡原発は最大震度7の揺れと21メートルの津波に襲われます。伊方原発も6強の揺れと3メートルの津波が押し寄せます。いずれもこれまでの想定を上回るもので、地震や津波に耐えられるかどうか見直しが不可欠です。
とくに浜岡原発の場合、東日本大震災の後政府が運転停止を要請して、3〜5号機の運転を停止しました。防波壁のかさ上げ工事などを行っていますが、完成しても防波壁の高さは18メートルにしかならず、新しく想定した最大級の津波が押し寄せれば、海水が敷地内に流れ込むことになります。
東日本大震災のさい福島第1原発を襲った揺れの強さは6強、津波は15メートル程度でした。それでも全電源喪失から炉心溶融を起こし、大量の放射性物質を放出するという最悪の事故を引き起こしました。浜岡原発はそれをはるかに上回る揺れと津波に襲われます。追加工事などでごまかさず、原発そのものの廃止が急務です。
伊方原発の場合、政府は関西電力大飯原発(福井県おおい町)に続いて再稼働させることを目指し、経済産業省の安全・保安院も「ストレステスト」(耐性試験)の1次評価を了承しています。しかし今回の想定は盛り込まれていません。「ストレステスト」自体安全性を保証するものではありませんが、その再検討さえ行わず再稼働などというのは絶対に許されません。
原発からの撤退決断こそ
ことは浜岡原発や伊方原発にとどまりません。世界有数の地震国である日本で、列島各地に原発を建設し稼働させてきた危険性が、東日本大震災を機にあらためてあぶりだされているのです。大飯原発など各地の原発で、地震を引き起こす活断層の影響を十分評価していなかったことも相次いで明らかになっています。
もともと技術的に未完成で、事故を起こせば取り返しがつかない原発を地震列島に乱立させてきたことこそ、根本から見直すべきです。原発からの撤退を決断することが、いよいよ求められます。