2012年4月2日(月)
米フロリダ黒人高校生射殺
人種・銃 全米に波紋
「正当防衛」に批判噴出
米フロリダ州中部サンフォードで、17歳の黒人高校生を射殺した28歳の白人男性が「正当防衛」を理由に釈放され、全米に波紋を広げています。3月31日には、地元警察署に数千人が詰め掛け、白人男性の逮捕を要求。人種問題と銃規制をめぐる議論は首都ワシントンにも及んでいます。(ワシントン=小林俊哉)
抗議集会開く
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事件が起きたのは、2月26日でした。米メディアによると、この男性は高校生のトレイボン・マーティン君を不審者だと思い込み、追いかけて射殺。マーティン君は銃などの武器は所持していませんでした。地元警察は発砲が「自衛措置」だったとして男性を釈放。遺族はこれを不服とし、徹底捜査と男性の逮捕を求めています。
この事件の背景に“人種偏見”があったのではないかとして、男性の逮捕を求める抗議行動が全米に広がっています。3月23日には同州の高校生が授業をボイコット。ミズーリ州などでも抗議集会が開かれ、28日にはニューヨーク市議会が事件を非難する決議を採択しました。
オバマ大統領は23日、人種問題への言及は避けながらも事実関係の究明を要求。「私に息子がいたら、トレイボンに似ていただろう」と述べ、遺族の心情をいたわりました。
連邦司法省も、人種差別を禁じる公民権法に違反する疑いがあるとして捜査に乗り出しています。27日には少年の遺族がワシントンを訪れ、民主党議員らの会合で発言。男性の逮捕を要求する議員が相次いでいます。
男性が釈放された法的根拠の一つとなったフロリダ州の法律にも関心が集まっています。同州には、住民が“脅威”を感じた場合、その相手に対しては銃を使用してもよいとする法律があります。しかし“脅威”かどうかの判断は、その人の主観に委ねられており、同法には「先に撃ってもよい法」などのあだ名もあるといいます。
米メディアによると、男性は少年を射殺する直前に日本の110番にあたる911緊急番号に通報。オペレーターに「(少年を)追跡する必要はない」と制止されたにもかかわらず、少年を追跡しました。一部識者からは、少年を追跡して発砲した行動は「正当防衛」にはあたらないとして、逮捕を見送っている警察への批判も出ています。
州法が暴力増
地元メディアによると、2005年以来、同法が適用された130の事件の7割以上で「正当防衛」が主張されたといいます。同様の法律はフロリダ州のほか南部を中心に約20州で制定されており、「同法は、暴力を抑止するより増加させている」(連邦上院司法委員会のシューマー議員)など、州法改正の必要性を指摘する声が出ています。
米メディアによると、発砲した男性は、父親が白人で母親がヒスパニック。“自警団活動”に熱心だったともいわれ、今回の事件では、先に暴行を受けていたと主張しています。