2012年4月2日(月)
消費税に頼らない抜本的対案を掲げてたたかう
NHKインタビュー 志位委員長が語る
日本共産党の志位和夫委員長は1日、NHK「日曜討論」の各党代表インタビューに出席し、消費税増税法案の問題点と日本共産党の「社会保障充実、財政危機打開の提言」、年金問題や原発再稼働などについて質問に答えました。聞き手は、神志名(かしな)泰裕NHK解説委員でした。
消費税大増税
暮らしも、経済も、財政も壊す、先のない道
神志名泰裕解説委員 消費税増税の問題は、これから国会の論戦の大きな柱になるんですが、共産党は反対ということですが、その理由はどういうことなんでしょうか。
志位和夫委員長 ただでさえ国民の所得と消費が長期にわたって落ち込んでいるもとで、13兆5000億円もの大増税をかぶせましたら、経済の6割を占める個人消費、そして雇用の7割を支える中小企業に大打撃となって、日本経済をどん底に突き落とす。これは火を見るよりも明らかだと思うんですね。
そうなってきますと、消費税を増税しても、ほかの税収がどーんと下がってしまって、財政破綻がいっそうひどくなる。実際、1997年に消費税を5%に引き上げる増税が強行されたことがきっかけになって、長期不況となり、この14年間で税収は90兆円から76兆円に14兆円も減りました。消費税増税は「安定財源」にならない、財政破綻をひどくするというのは、歴史で証明ずみだと思うのです。
くわえて、(政府は)「税と社会保障の一体改革」といいますけれども、年金は削る、医療費負担は上げる「一体改悪」というのが正体です。
この道は、暮らしも、経済も、財政も壊す、先行きのない道だと考えます。
共産党の「提言」(1)
無駄遣いの一掃、「応能負担」の原則にたった税制改革を
神志名 消費税に代わる財源というのはあるんですか。
志位 私たち日本共産党は、消費税に頼らずに、社会保障を充実し、財政危機を打開する「提言」を発表しております。そこでは、二つの柱を同時並行で進めようと提案しているんです。
第1は、無駄遣いの一掃とともに、「応能負担」の原則、すなわち負担能力に応じた負担という原則に立った税制改革を行うということなんですね。
まず、富裕層と大企業に応分の負担を求めます。この間の富裕層への減税によって、いま所得1億円を超えますと、所得税の負担率が下がってしまうという極端な不公平税制になっておりまして、これを大胆に見直す。それから、これ以上の大企業減税はストップする。
つぎの段階で、社会保障をヨーロッパ水準に抜本的に拡充するさいには、国民みんなで支えることが必要になってきますが、その場合も、消費税ではなくて、所得税の累進(課税)の強化によって財源をまかなう。
これらによって、だいたい18兆円から21兆円のお金をつくって、それを社会保障や暮らしにあてようというのが提案です。
共産党の「提言」(2)
「国民の所得を増やす経済改革」で、経済成長、税収増をはかる
神志名 二つ目の柱とはどういうことなんですか。
志位 第2の柱は、「国民の所得を増やす経済改革」を進めようということなんですね。
たとえば、労働者派遣法を本当の意味で抜本改正して、「雇用は正社員が当たり前」の社会をつくる。最低賃金を大幅に引き上げて、「働く貧困層」をなくす。中小企業と大企業の公正な取引のルールをつくる。TPP(環太平洋連携協定)の参加はやめて、農林水産業を再生する。
これらの改革によって、大企業にたまった260兆円の内部留保を社会に還流させて、日本経済を内需主導の健全な成長にのせ、そのことによって税収増をはかろうと(提案しています)。
私たちの見込みでは、だいたいこういう経済成長によって、10年後には、税の自然増収が20兆円を見込める。第1の柱(の改革)とあわせまして、約40兆円の新たな財源が出てくる。これで、暮らしを良くして、財政再建にも道を開こうというのが、私たちのプランです。
年金問題の焦点
まず「減らない年金」にし、最低保障年金制度の確立にすすむ
神志名 つぎに、社会保障、具体的には年金の制度について、(日本共産党の「提言」でのべている)この最低保障制度の導入、低年金者に対する底上げ、これは野田政権の考え方と似ているように思うんですが。
志位 これは根本的に違うんですね。
神志名 違うんですか。
志位 ええ。民主党のいう最低保障年金というのは、実は満額の7万円(月額)をもらえるようになる人が出てくるのは、40年先のことなんですよ。そして、財源は、消費税の追加7%の増税でまかなうというものです。
私たちは、すみやかに最低保障年金制度の確立にむかう。そして財源は消費税に頼らないというものです。
この年金の問題では、民主党政権がいま実際にやろうとしていることは何か、ここのところが、私は重要だと思うんですね。つまり、2015年までに年金給付を2兆円減らす。さらに、(現行65歳から)68歳〜70歳というところに支給開始年齢を繰り延べするという大削減計画をやろうとしていますでしょう。
私たちは、この削減計画をストップして、まずは「減らない年金」にする。そして、最低保障年金制度に進むという、そういう案を示しています。
大企業・富裕層への課税
国際的流れにてらしても、無理のない当然の提案
神志名 共産党の対案をみますと、大企業と富裕層に対する課税は、企業が逃げ出すということはないんですか。
志位 私たちの提案というのは、国際的な流れからしても無理のない当然の提案だと思っているんです。
いま法人税のことをいわれましたけれども、私たちの法人税に対する考え方は、これ以上の減税はやめる。そして、法人税率の引き上げについては、世界に働きかけて、国際協調で上げようじゃないかということなんです。OECD(経済協力開発機構)などでも、いま世界でやっている法人税率の引き下げ(競争)については、これは「有害な税の競争」だという警告が出されていますし、G20(主要20カ国・地域首脳会議加盟国)でも「適正な課税が必要」だという議論がなされています。そういう流れを日本から起こそうということです。
それから「富裕税」については、私たち(の「提言」)は高額の資産にかけようということなんですけれども、これはアメリカ、フランス、イタリアなど欧米で、そういう流れが起こっていますから、そういう流れを日本でも起こそうということで、当たり前のことだと思っております。
原発再稼働の是非
安全性に関する科学技術的判断で決めるべき、「政治判断」など論外
神志名 残りの課題について、いくつかお聞きしたいんですが、原発再稼働の問題は基本的にどんな考え方なんですか。
志位 再稼働の是非というのは、安全性に関する科学技術的な判断によって決められるべきであって、「政治判断」などというもので決めていいものではない、ということをまず強くいいたいですね。
だいたい、福島原発の事故の原因もわかっていない。原子炉の中(がどうなっているか)もわかっていない。こういう状況でどうして再稼働が安全だといえるのか。
くわえて、「ストレステスト」(耐性試験)の1次評価をやったから(再稼働にすすむ)ということをいっていますけれども、「ストレステスト」というのは、(原発が)地震や津波のさいにどれだけ余裕があるかということを、コンピューターで計算するというだけのもので、これをもって安全性の保証にはならないということは、経産大臣も、原子力安全委員長も認めているわけです。
それからもう一ついいますと、政府は、原発から50キロ圏内を防災重点地域にして対策を決めるというんですが、この避難計画がまったく決まっていない。
こういう状態で再稼働というのは論外だと、私は思います。原発ゼロ(の日本)への決断が必要だと思います。
解散・総選挙
批判とともに、解決の展望と希望を大きく語り、躍進を期す
神志名 最後に衆議院の解散・総選挙にどう臨まれますか。
志位 いまの政治状況というのは、民主党に「政権交代」したわけですけれども、(民主党政権は)「政治を変えたい」という国民のみなさんの願いをことごとく裏切った、公約を裏切った、自民党とうり二つの政党になってしまいました。そういうなかで国民のみなさんのなかに、政治に対する不信、あるいは閉塞(へいそく)感が非常に強いと思うんですね。
それだけに、日本共産党がどんな問題でも、批判するとともに、「こうやれば解決できる」という解決策を大きく示していきたい。今度の経済の「提言」もその一つですが、外交でも示して、そして、日本の政治が、アメリカ中心・大企業中心という古い枠から抜け出したら、こういう希望と展望が出てきますよということを大いに語って、躍進を期したいと考えています。
神志名 ありがとうございました。
志位 ありがとうございました。