2012年3月30日(金)
東電に電力供給義務
値上げの押しつけも 停止の脅しも許されない
東京電力が1月に発表した企業向け電気料金の値上げに対し、4月1日からの実施について同意した企業は、わずか5%にとどまっていることが明らかになりました。平均17%もの大幅な料金値上げには「とても応じられない」と怒りの声があがる一方、同意しなかった場合には、電力供給が止められてしまうのではないかとの不安も出ています。
東電の高津浩明常務は27日の会見で、「新しい契約料金に賛同いただけないと、契約が成り立たないので電気をお届けすることが難しい」と言い放ち、値上げに同意しない顧客に対し、電力供給を停止する可能性があるという考えを表明しました。
しかし、契約電力が50キロワット以上の自由化されている供給先であっても、東電は法律上、電力の供給義務を負っています。一方的な供給停止は許されません。
自由化部門では、電力の供給者と需要家間の交渉で電気料金が決められます。需要家はどこから電力供給を受けるかを選択することができます。同時に、誰からも電力の供給を受けることができない需要家が出ないよう、東電など地域独占が認められている10電力会社に対しては、電気事業法(第18条第2項)により、供給交渉が合意に達しない需要家に対して、供給を行う義務を課しています。これを「最終保障義務」といいます。発電と送配電を独占し、基本的に他社との競争のない「地域独占」が認められているからこそ当然の義務です。
枝野幸男経済産業相は28日、参院経済産業委員会で値上げに同意しない企業への電力供給を一方的に止めようとする東電の動きについて「行政指導」を行う考えを示しました。しかし、電力会社が法的に電力の供給義務を負っていることについて言及していません。
「値上げは権利」(西沢俊夫社長、2011年12月22日)とまで公言し、電気料金の値上げを一方的に押し付けようとし、値上げに同意しなければ「電気を止める」などと脅しをかける東電の姿勢は許しがたいものです。(柳沢哲哉)