2012年3月28日(水)
主張
情報保全隊判決
違法な監視活動直ちにやめよ
自衛隊の情報保全隊が、イラクへの自衛隊派兵に反対する集会参加などの活動を監視していたのは違憲・違法だとその差し止めを求めた裁判の判決があり、仙台地方裁判所は違法な情報収集と認め、「人格権」を侵害された原告5人に賠償を命じました。裁判所が自衛隊の情報収集活動を違法と判断したのは初めてで、政府・自衛隊は違法な国民監視活動を直ちに中止すべきです。
あらゆる分野を監視下に
この問題は2007年6月、日本共産党の志位和夫委員長が、陸上自衛隊情報保全隊(=当時、現在は自衛隊情報保全隊に一本化)が作成した内部文書を公表、批判したのがきっかけです。文書には、イラク派兵に反対する活動とともに、消費税増税反対、医療費負担増凍結・見直し、国民春闘、小林多喜二展などの監視活動が記載されており、自衛隊が国民のあらゆる分野を監視下に置いていたことを浮き彫りにしました。
しかも文書には、関係団体や内容とともに、個人の名前や「日本共産党系」「民主党系」などの色分けまで記載されていました。国民の集会・結社や表現の自由を侵害し、思想・信条や信仰の自由まで踏みにじることは明らかです。志位委員長の発表は大きな反響を呼び、日本共産党が呼びかけた市民集会にも多くの人たちが参加し、違憲・違法な監視活動の即時中止を求めました。
当時の政府は文書の存在さえ認めず、違法な活動だとの指摘は受け入れませんでした。このため東北方面情報保全隊の文書で取り上げられた市民らが、思想・信条、プライバシー権はもとより、平和的生存権をも侵害する違憲・違法な行為だと司法による救済を求めて訴えたのがこの裁判です。
仙台地裁の判決は憲法判断には踏み込まず、監視活動の差し止めも認めませんでした。しかし、志位委員長が発表した文書の原本が情報保全隊によって作成されたことは認め、国民が自分についての情報をコントロールする権利は、「人格権」として認められるべきだとして、情報保全隊が個人の情報を勝手に収集し、保存するのはその侵害に当たると、一部の原告に賠償を認めました。政府の主張を突き崩す重要な判決です。
国民は自らの情報を決定する権利を持っているというのが「自己情報コントロール権」の考えです。国民が望まないのに個人情報が不当に収集・保存されれば権利が侵害され、人格権が否定されたことになります。この点で、情報保全隊の活動を「違法」と判断した判決は重要な意義を持ちます。
監視活動そのものが問題
同時に判決は、多くの原告について個人情報が収集されたとまでいえないといって賠償を認めませんでしたが、本来この問題は、自衛隊の監視活動そのものにまで踏み込んで判断すべき問題です。自衛隊が戦前の憲兵まがいの国民監視をおこなうこと自体、国民を萎縮させます。言論・表現の自由や思想・信条の自由に反することは明らかです。
情報保全隊の監視活動が自衛隊内にとどまらず国民全体に向けられていたことは重大です。軍隊が国民全体を監視下に置いた戦前のような暗黒政治を繰り返さないために違憲・違法な監視活動をきっぱり中止させることが必要です。