2012年3月16日(金)
社会保障充実と財政危機打開
消費税に頼らない道ここに
党「提言」各界懇談会 志位委員長の報告
12日に開かれた「社会保障と財政危機打開の提言」各界懇談会で、日本共産党の志位和夫委員長がおこなった報告と閉会のあいさつは次の通りです。
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みなさんこんにちは。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます。今日はたくさんの方々が、ご多忙中にもかかわらず、私たちの懇談会にお運びくださいまして、まことにありがとうございます。まず心からのお礼を申し上げます。
民主党・野田政権は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税を2014年に8%、15年に10%に増税する大増税法案を今国会に提出しようとしています。多くの国民から怒りと不安の声がわきおこっています。大震災発生から1年が経過した被災地からも、「なぜ被災者がこんなに苦しんでいるさなかに大増税の追い打ちか」という怒りの声が広く寄せられております。
同時に、それでは社会保障の再生と拡充をどうやってすすめるか、そのための財源をどうやってつくるのか、国と地方の財政危機をどう打開していくのか。多くの国民のみなさんが、真剣にその答えを求めておられると思います。
日本共産党は、消費税増税に断固として反対をつらぬくとともに、この動きに対する抜本的対案として、2月7日、「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表いたしました。
まず私のほうから、政府の「一体改革」の問題点とともに、日本共産党の「提言」の基本点を説明させていただき、そのうえで参加者のみなさんから忌憚(きたん)のないご意見をいただきたいと思います。
政府の「一体改革」―社会保障も、財政も、経済もダメにする
消費税大増税を国民に押し付ける“三つの合理化論”
まず政府のいわゆる「社会保障と税の一体改革」なるものの問題点について報告します。
「一体改革大綱」を読みますと、「はじめに」のところで、消費税大増税を国民に押し付ける“三つの合理化論”が書かれております。
第一に、「社会保障の充実と安定化」がはかられる。あたかも社会保障が良くなるかのようなことが書いてあります。
第二に、「社会保障の安定財源確保と財政健全化が同時達成」される。財政の展望も開けるかのようなことが書いてある。
そして第三に、「経済成長との好循環」が実現する。
「一体改革」をやりますと、社会保障も、財政も、経済も、バラ色の日本が生まれるかのようなことが書かれています。
しかし、結論からいいますと、これはどれも成り立ちません。三つとも国民を欺くウソだというのが結論であります。そのことはこの間の私たちの国会論戦でもすっかり明らかになった問題であります。
「社会保障はムダの宝庫」――社会保障大改悪との「一体改悪」がその正体
第一に、「社会保障の充実と安定化」といいますが、社会保障はいったいどうなるのかという問題です。
消費税が5%から10%に引き上げられると、約13・5兆円の大増税になります。そのうち新たな「社会保障の充実」に充てられるお金はいくらですかと聞きますと、5%の引き上げ分のうち、わずか1%分、2・7兆円というのが政府の答弁です。残り4%分というのは、既存の社会保障の財源と消費税が置き換わるだけで、新たな「社会保障の充実」には使われないということになります。
それでは、削減される社会保障はどれだけか。まず、2015年までで、年金の給付減、子ども手当の減額、医療費の負担増、介護利用料の負担増などで、ちょうど2・7兆円です。政府が「充実」といっている分が吹き飛びます。さらに「中長期的」には、年金支給開始年齢の引き上げで6兆〜10兆円の実質負担増です。「充実」分をはるかに上回る切り捨てメニューがずらりと並んでいます。
くわえて、政府が「充実」といっている2・7兆円の中にも、国民にとって有害な「毒」がいろいろと入っています。たとえば政府が「充実」の目玉としている「子ども・子育て新システム」です。児童福祉法を改悪して、市町村の保育への義務をなくす。保護者が自力で保育所を探し、直接契約をしなければならなくなります。待機児童の解消もすすまない。大混乱も起こるでしょう。国民の中から大きな反対の声がわきおこっているものですが、これが「充実」の目玉とされている。
私たちが国会論戦のなかで、これらの全体の事実を示しますと、さすがに政府も、「社会保障の全体の水準が上がる」とは答弁できませんでした。
国会質疑の中で、本音が出てきました。民主党の前原(誠司)政調会長は、「社会保障はムダの宝庫、いかに切り込んでいくかが大事だ」と、生活保護の医療扶助の切り捨てなどを公然と政府に求めました。安住(淳)財務大臣は、自民党への答弁で、「社会保障への切り込みが足らないといわれれば、非常に反省しなければいけない」と、もっと切り捨てに努力しますということをいいました。ここにこそ政府の本音がはっきりと示されています。「社会保障はムダの宝庫」――ここまであからさまな社会保障切り捨て論は、自民党時代にもなかったのではないでしょうか。
「一体改革」と、あたかも「社会保障を良くするため」という装いをほどこしていますが、消費税増税と社会保障改悪の「一体改悪」というのがその正体だということを、まずのべたいと思います。
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「社会保障の安定財源確保」にも「財政健全化」にもつながらない
第二に、(野田政権は)消費税を増税すれば、「社会保障の安定財源確保と財政健全化が同時達成」されるといいますが、この理屈が成り立つかという問題です。
消費税を5%に増税する前の年の1996年度と、直近の2010年度で、国と地方の税収の比較をしてみました。たしかに消費税増税によって消費税の税収はしっかりと増えています。しかし法人税、所得税など、他の税収は大きく減っています。その結果、税収の総額は、90兆円から76兆円に14兆円も落ち込んでおります。この14年間で計算しますと、累計で84兆円もの税収減というのが、結果であります。
その最大の原因は、消費税増税をきっかけに景気が悪化し、日本経済が長期の低迷・後退におちいったことにあります。くわえて大企業・金持ち減税がおこなわれました。両方があいまって、税収の深刻な空洞化を招いているのであります。
消費税を増税しても、経済が悪くなれば、全体の税収は減る。消費税増税は、「社会保障の安定財源確保」にもつながらず、「財政健全化」にもつながらない。それが歴史の事実だということを強調したいと思います。
よく消費税増税派は、「消費税は景気に左右されない安定財源になる」といいます。たしかに消費税だけを見れば、景気が悪くなっても税収を確保できるでしょう。その点では税金を取る側からすれば、都合のよい税金です。しかし、取られる側の国民からすれば、景気が悪くなり、生活が苦しくなっても取られるわけですから、こんなにつらい税金はありません。そして、所得税や法人税を含む税収の全体は、「安定」どころか「不安定化」させ、空洞化を引き起こす。これが消費税の増税だということを強調したいと思います。
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家計消費と中小企業――日本経済を支える二つの柱に大打撃
第三に、「経済成長との好循環」が実現するという政府の言い分はどうでしょうか。
私は、率直にいって、13・5兆円もの大増税を計画しながら、こんな能天気で、噴飯モノの理屈を平気で持ち出すこと自体、政府が今回の大増税が日本経済にどんなに重大で深刻な打撃をもたらすかについて、何の認識も持っていないということを証明するものだと思います。
いま、消費税を大増税したら日本経済はどうなるでしょうか。大まかにいって、二つの大問題が引き起こされることになります。
一つは、日本経済の6割を占める家計消費への大打撃です。
この点で、日本国民は、まだ記憶に新しい歴史的経験をもっています。1997年に、当時の橋本内閣によって強行された消費税5%への増税をはじめとする「9兆円の負担増」が、何をもたらしたか。当時は、弱い足取りではありましたが景気は回復途上にありました。働く人の所得、消費も伸びつつありました。ところがそれを上回る負担増によって、家計の底が抜け、景気をどん底に突き落とした。
あの時と比較して今回の大増税はどうでしょう。97年をピークに、勤労者世帯の可処分所得は、平均で、596万円から504万円へと92万円も減っている。消費支出は、平均で、429万円から370万円へと59万円も減っています。ただでさえ長期にわたって所得も消費も落ち込みが続いているもとでの大増税となるのです。
しかも、その規模は、消費税増税で13・5兆円、社会保障の給付減や負担増などをあわせると、総額で20兆円をこえる巨大負担増となります。平均的な勤労者世帯で計算しますと、25・5万円もの実質所得を奪うということになります。これがどんなに消費を冷え込ませ、景気を悪化させることになるか。その打撃が甚大なものとなることは、火を見るよりも明らかです。
いま一つは、日本の雇用の7割を支えている中小企業への大打撃です。
日本商工会議所など中小企業4団体が、最近おこなった調査によれば、「消費税が引き上げられた場合、販売価格に転嫁できるか」という問いにたいして、5割から7割の中小業者が「転嫁できない」と答えています。
現在の5%でも転嫁できない実情を、私はたくさんうかがってきました。転嫁できない場合にどうするのか。「身銭を切る」ことになります。赤字でも、あるいはほとんど利益が出ないもとでも消費税を納税するために、自らの保険を解約する、定期預金をおろす、家族は無給で働く、ささやかな不動産を切り売りする、そして泣く泣く人件費にも手をつけざるを得ない、こういう実態がつぎつぎと訴えられました。10%に増税されたら、日本から商店街がなくなってしまう、町工場がなくなってしまう、中小企業の廃業・倒産が激増するという不安が、たくさん私たちに寄せられています。
この問題を国会で政府にただしますと、政府は、「転嫁できる環境をつくるために全力をあげます」と繰り返します。しかし、どうやったらそんなことが可能になるというのでしょうか。だいたい、「転嫁できない」という状態は、消費税導入以来、23年間にわたって、ずっと続いている大問題です。それが税率を2倍にしたら急に「転嫁できる環境」になるなどということが、どうしていえるのか。
とりわけ、いま、デフレの状況が長く続いています。デフレというのは、社会全体の需要が不足しているためにモノが売れなくなり、物価が下落する現象です。そのもとで、販売価格に消費税増税分を上乗せすれば、ますますモノは売れなくなるでしょう。小売業者の方々にうかがっても、「こんなデフレのもとでとても上乗せなど考えられない」という訴えが、たくさん寄せられました。
だいたい、主要国でこんな長期にわたってデフレが続いている国などないし、そんな経験もありません。ましてや「デフレ下での消費税増税」など、どの国でもやったことはありません。それはこれまで経験したことのないような経済への破局的な打撃をもたらすことになることは、間違いありません。
この二つの問題――日本経済を支える家計消費と中小企業という二つの柱への深刻な打撃という問題を、私たちは国会でただしてきましたが、政府からまともな答弁がない。誰も真剣に考えてもいない。これは恐るべきことだと思います。
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底なしの「大不況運動」の引き金を引き、すべてを破たんに導く先のない道
内閣府が「経済財政の中長期試算」というのを出しています。これを見ますと、驚くべきことに、「消費税増税の景気への影響はフラット」――“影響は与えない”と書いてあります。「駆け込み需要」と「反動減」という一時的な影響だけしかないというのです。
これは日本経団連の主張ですが、それがそのまま政府の認識とされているのです。ここでは消費税増税によって国民の実質所得が恒常的に奪われる問題、中小企業が大打撃を受けるという問題などがまったく考慮されておりません。
ただでさえ長期不況が続くもとで、それに追い打ちをかける大増税を強行すれば、政府が底なしの「大不況運動」の引き金を引くことになる。私は、このことを強く警告しなければなりません。
このように、消費税大増税は、国民の暮らしに深刻な苦難を負わせ、貧困と格差を深刻にするだけでなく、この道は、社会保障も、財政も、経済も、すべてが破たんにおちいる、先のない道だということを強く言いたいと思います。
国民の願いにそくして展望を開こうとすれば、政治の姿勢を根本から転換し、別の選択肢を真剣に探求する必要があります。私たちはこういう立場に立ってこの「提言」を作成いたしました。
日本共産党の「提言」について――基本的考え方を中心に
つぎに、日本共産党の「提言」について報告いたします。細目は、お渡しした「提言」そのものをぜひお読みいただくことを、お願いしたいと思います。
私の報告では、この「提言」を作成するにあたって、私たちが基本的考え方にすえたことについて、4点ほど説明したいと思います。
「社会保障の段階的充実」と「国民所得を増やす経済改革」を同時並行ですすめる
第一は、「社会保障の段階的充実」と「国民の所得を増やす民主的経済改革」を「二つの柱」に位置づけ、それを同時並行ですすめるということです。ここに私たちの「提言」の一番の眼目があります。
日本経済は、長期にわたる低迷と後退におちいっています。この現状をそのままにして、その枠内でいくら歳出と歳入の改革をすすめても、絶対に展望は開けてきません。「国民の所得を増やす民主的経済改革」を同時並行ですすめてこそ展望が開けてきます。
すなわち「提言」で具体的に提案しているように、労働、中小企業、農林水産業、エネルギーなどの各分野で、国民の暮らしと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やす改革を実行する。この改革によって、大企業の内部に蓄積された260兆円の内部留保を日本経済に還流させる。そして、経済を内需主導で健全な成長の軌道に乗せていく。経済全体のパイを大きくすることによって、税収を増やし、社会保障を良くする真の意味での安定財源をつくるとともに、財政危機打開への道を開く。
同時に、「社会保障の段階的な充実」をすすめることは、二つの面で経済にもプラスの影響が出てきます。一つは、国民の暮らしを支え、将来不安を軽減し、消費マインドを温めるという効果です。いま一つは、地域に新しい仕事と雇用を生み出す効果です。二つの面で経済効果があり、内需主導の経済成長を促進することになります。
「社会保障充実」と「民主的経済改革」――この「二つの柱」を同時並行ですすめることで、相乗的に効果を発揮し、社会保障、経済、財政の三つの分野で一体的に問題を解決する展望が開かれる。ここに私たちの「提言」の一番の眼目があります。
日本の財政危機の歴史的原因をふまえ、危機打開の展望を開く提案
実は、これは日本の財政危機の歴史的原因をふまえた提案ともなっています。
財政危機の原因をたどりますと、1990年代までは、日本の財政危機の最大の原因は、公共投資をはじめとした歳出面のムダ遣いにありました。アメリカから押しつけられた10年間で430兆円、のちに630兆円となった「公共投資基本計画」によって異常膨張したムダな公共事業が、この時期の財政危機の主役でありました。
2000年代に入ると、さすがに公共投資へのばらまきは続けられなくなり、総額は縮小しますが、代わって財政危機の主役となったのは、税収の空洞化でした。その原因は、先にみたように、大企業と大金持ちへの減税のばらまきとともに、経済そのものが深刻な停滞・後退におちいったことにありました。
私たちの「提言」を実行することによって、日本経済の深刻な停滞・後退を打開して、内需主導の健全な成長の軌道に乗せることは、財政危機を打開するうえでも二重に効果が出てきます。
一つは、経済成長によって税収そのものが増えることです。いま一つは、対GDP(国内総生産)比で長期債務残高を減少に向ける展望を開くことです。欧米諸国も、政府の長期債務残高そのものは日本と同程度、あるいはそれ以上に増やしています。しかし、欧米諸国はGDPも増えていますので、対GDP比での長期債務の伸びは、小さいものになっています。
ところが、日本では、長期にわたってGDPそのものが伸びない、「成長が止まった国」になってしまっている。そのため、長期債務の増大が、対GDP比での長期債務の悪化と直結してしまっています。日本経済を内需主導の安定的な成長の軌道に乗せることは、対GDP比で長期債務残高を減少に向ける展望を開くことになるでしょう。
私たちは、この「提言」で提案している社会保障、税財政、経済の民主的変革をおこなうことで、2040年ごろまでの平均の名目成長率は、2・4%程度が可能になると見込んでいます。賃金が上がり、物価も上がってきますので、実質はだいたい1%強と見込んでいます。そういうなかで2030年ごろまでには、基礎的財政収支を黒字化し、対GDP比の長期債務残高を減少に向かわせることは可能だと試算しています。
社会保障の段階的な拡充を、財源を段階的に確保しながらすすめる
第二に、日本共産党の「提言」は、社会保障拡充について段階的アプローチをとっています。すなわち、第1段階で「社会保障再生計画」を実行する。つぎの第2段階で、「先進水準の社会保障」への拡充をすすめる。財源を段階的に確保しながら、段階的にすすめる方策を打ち出したところに、私たちの「提言」の新しい特徴があります。
第1段階の「社会保障再生計画」では、小泉内閣以来の「構造改革」によって壊された社会保障を再生させるとともに、急を要する一連の改革の課題にとりくみます。財源は、ムダ遣いの一掃と、富裕層と大企業に応分の負担を求めることでまかないます。
それをやりあげたうえで、第2段階の「先進水準の社会保障」にすすみます。ヨーロッパの多くの国では当たり前となっている水準へと日本の社会保障の水準を抜本的に高めるという目標を実行に移します。そのための財源は、累進課税を強化する所得税の改革でまかなうというのが、私たちの提案であります。
たとえば、年金についていいますと、自公政権時代の大改悪によって支給水準がどんどん減らされるという事態が大問題になっています。第1段階では、この仕組みを撤廃して、「減らない年金」にする。将来にわたって安心できる年金にしていく。同時に、受給資格期間をいまの25年から10年に短縮するとともに、すべての受給者に満額受給の場合と同じ、月3万3000円の国庫負担を出し、低年金の底上げをはかるというのが、第1段階の計画であります。
そのうえで、第2段階では、最低保障年金制度を確立するというのが目標です。最低保障額は月額5万円からスタートし、そのうえに保険料に応じた額を上乗せし、これによって無年金・低年金などの矛盾を抜本的に解決する道に踏み出していきます。年金の問題では、このような段階的アプローチで、問題を解決する方策を提案しています。
医療の問題では、相次ぐ窓口負担の引き上げで、受診抑制がきわめて深刻です。「提言」では、第1段階では、窓口負担を国の責任で、「子どもは無料、現役世代は2割、高齢者は1割」へと引き下げるということをまずおこないます。国民健康保険料(税)が高すぎて払えないという深刻な実態を打開することは焦眉の課題です。国の責任で、1人1万円の引き下げをおこなうことに、まず財源を充てるという計画になっています。
そのうえで、第2段階では、多くのヨーロッパ諸国でおこなわれているように、また医療保険制度の本来のあり方として、医療費の窓口負担は無料にする。ここへすすみたいというのが、私たちの計画であります。
なぜ段階的拡充か――二つの理由を踏まえた合理的、現実的な提案
なぜこうした社会保障の段階的拡充の提案をおこなったのか。理由は大きくいって二つあります。
一つは、小泉内閣以来の「構造改革」によって壊された社会保障の傷痕が、医療、年金、介護、障害者福祉など、あらゆる分野であまりに甚大であり、この傷痕をなおすこと自体が一大事業となっているからであります。この実態を見据えるならば、第1段階で「再生」を、第2段階で「抜本的拡充」をという段階的アプローチがどうしても必要になってくるということを、私たちは判断いたしました。
いま一つの理由は、財源という点でも、段階的なアプローチがどうしても必要になるということです。
第1段階の改革を実行するための財源として、私たちが考えている、ムダ遣いの一掃や富裕層と大企業への応分の負担を求めるなどの改革は、いますぐにでも着手できる改革であります。しかし、第2段階での財源として考えている、所得税の累進課税の強化は、すぐには実行できません。私たちの「提言」が二つ目の柱に位置づけている「民主的経済改革」を実行することによって、国民の所得が着実に増え続けるようになる――賃金が増え続けるようになり、中小企業の経営も安定する、そういう状態になって初めて実施に移すことができます。それまでには一定の時間がかかります。
こういう二つの理由から段階的アプローチをとったわけですが、「提言」のこの考え方は、私は、社会保障の現状にてらしても、財源を考えても、もっとも合理的、現実的で、同時に大志ある方針であると考えるものです。
財源の考え方――富裕層・大企業優遇から「応能負担」に切り替える
第三に、「提言」を太く貫いているのは、財源の考え方を大本から変えるということです。すなわち、財界いいなりの富裕層・大企業優遇から、税と社会保障の根本原則である「負担能力に応じた負担」――「応能負担」に切りかえる。第1段階でも、第2段階でも、この立場は一貫しております。
第1段階では、ムダの一掃とともに、富裕層と大企業に応分の負担を求める一連の税制改革を提起しています。
私がここで強調したいのは、「提言」が提案している富裕層と大企業への応分の負担という方針は、特別のものではなくて、だれが考えても無理がない、当然の道理あるものだということです。
たとえば、富裕層への課税の問題です。政府は、申告所得階級別の所得税負担率のグラフを発表しておりますが、驚くことに、所得1億円をピークに負担率が下がります。これは所得税の最高税率が引き下げられたうえに、証券取引や土地取引による所得は分離課税とされ、税率が低くなっているからです。とくに証券優遇税制――株の取引や配当にかかる税金が、この間20%から10%に減税され続けていることはきわめて重大な問題です。
私たちが国会質問で、このグラフを政府に突きつけますと、さすがに「これは結構です」とはいえません。証券優遇税制についても、首相は「2年後には、よほどのことがない限り、20%に戻します」と言わざるを得ません。それだったらなぜすぐやめないのかということが大問題ですが、ともかくそういう答えをせざるを得ない。
先日、笠井(亮衆院)議員が、「提言」で提案している富裕税の提起を、国会でいたしました。これについても首相は、「所得再分配の機能を見直すという方向でこれから議論していく」と答えざるを得ませんでした。もちろん、これも「すぐにやる」とは言いません。どちらもそこに大問題があるわけですが、正面から私たちの提起を否定できないということは大事なところだと思います。
大企業への新たな減税を中止し、優遇税制を見直せというわが党の提起についても、政府はそれを正面から否定する論拠を持ちません。
先日の予算委員会の質疑で、私はこう聞きました。「首相は、本会議の答弁で『法人税減税をおこなえば、雇用や国内投資の拡大につながる』と答えたが、どうして『雇用』や『国内投資』につながるのか、説明してほしい」。こう聞いたわけですが、首相はどうしてつながるのかを答えられないわけです。「投資や雇用につなげていくことを期待しております」というだけでありました。「期待する」では答えになりません。
経済産業省が約6千社を対象におこなった調査がありますが、その結果を見ましても、企業が投資先を決めるさいに何よりも重視しているのは「需要」であって、「税金」と答えているのはわずかしかありません。企業は「需要」を求めて海外に投資するわけです。国内に投資が起こらないのは、国内の需要が冷え切っているところに最大の原因があるわけです。
消費税大増税は、ただでさえ落ち込んでいる内需をさらに落ち込ませ、国内投資をさらに減らし、産業空洞化、雇用減をさらに深刻にし、それがいっそうの内需落ち込みにつながる悪循環の引き金を引くことになります。それと一体に法人税の減税をやったところで、雇用にも投資の拡大にもつながりません。「法人税を下げないと海外に逃げてしまうぞ」というのは、道理のない財界の脅しにすぎません。
負担能力という点では、大企業こそ最大の力を持っています。大企業は、世界経済危機のもとでも、内部留保を260兆円にまで増やしました。このお金は一体どこからきたのか。一つは、コスト削減で労働者や中小企業から吸い上げたお金です。もう一つ、相次ぐ法人税減税も、内部留保の増加の原因になっているということは、財界のシンクタンクなどからも広く指摘されている周知の事実です。
法人税の減税をやっても内部留保に積まれるだけであって、雇用にも投資にもまわりません。大企業の応分の負担というのは、労働者や中小企業や国民から吸い上げてつくった過剰な富を国民に還元せよという、当然のものであるということを強調したいと思います。
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第2段階では「国民全体で力に応じて支える」――所得税の累進強化の改革を
そのうえで私たち第2段階と呼んでいる段階では、「国民全体で、その力に応じて支える」と、所得税の累進課税の強化という方針を打ち出しました。「国民全体で」といいますと、消費税のことを思い出す方もいるかと思うのですが、「国民全体で」というだけでなく、「その力に応じて支える」というところが大事なところでありまして、私たちはあくまでも「応能負担」という立場を将来にわたって貫きます。
この方針を打ち出した理由というのは、「先進水準の社会保障」への抜本的拡充――最低保障年金の確立、医療費の窓口負担や介護利用料の無料化などを達成するためには、ムダの削減と富裕層・大企業に応分の負担を求めるだけでは、財源を確保することができないからです。そこにだけさらに負担を求めるということになると、現状では無理が生じてきます。
「先進水準の社会保障」にすすむためには、国民全体で支えることがどうしても必要になってきます。ただその場合も、私たちは絶対に消費税に頼るという選択はとりません。ここでも「応能負担」という原則に立って、所得税の累進課税の強化という税制改革によって財源をまかなうという方針を「提言」では打ち出しました。これはわが党にとっては新しい提案であります。
いま多くの国民のみなさんは、「社会保障は大事だから、何らかの形で自分たちも負担しなければ」という気持ちをお持ちだと思います。こうした国民の善意につけこんで、消費税増税を押し付けてくるのが、財界や政府のやり口ですが、これから将来にかけて、社会保障を本当に抜本的に良くすることを考えれば、誰がどう考えてもたくさんの費用がかかってくることも議論の余地がありません。
その場合にも消費税増税ではない別の道がある。所得税の累進強化という税制民主主義に立った別の道があるということを示すことが、現実的で合理的であり、「提言」全体に説得力をもたせるうえでも重要であると考え、こういう方策を提案いたしました。
民主的な国際経済秩序をつくるという視野にたって
第四に、この「提言」の全体が、民主的な国際経済秩序をつくるという視野に立ったものとなっていることを強調したいと思います。
たとえば「提言」では、法人税率について「将来的には、法人税の引き下げ競争を見直す国際的な働きかけをすすめ、下げすぎた法人税率の適切な引き上げをはかるようにしていきます」と提起しています。
この間、世界各国で法人税率の引き下げ競争が続いています。これは「有害な税の競争」とOECD(経済協力開発機構)も繰り返し警鐘を鳴らしている大問題であります。
とくに、欧米各国では、この間、「多国籍企業の投資を呼び込む」という名目で、法人税率の引き下げ競争が繰り返されてきましたが、その結果起こったのが何かと言いますと、各国の政府の財源が枯渇する、債務が膨れ上がる、文字通り「多国籍企業栄えて国滅ぶ」という事態が、各国で起こっています。最近のG20などでもその是正の必要性が議論されている問題です。
「提言」が提起している各国協調で多国籍企業に適正な課税をという提起は、私は、国際的大義と現実性があるものと考えます。
「提言」が「『為替投機課税』を新設する」という提起をおこなっていることも、いまの世界の動きのなかで重要な意義を持つものです。
最近、アメリカのマッキンゼー・アンド・カンパニーという会社が、世界の金融経済がどうなっているかの調査結果を発表しています。この調査で、金融経済としているのは、世界主要79カ国の株式と債権の残高のことですが、金融経済の規模は、2008年のリーマン・ショックの直後に一時的に減少していますが、その後また盛り返して直近の2010年には212兆ドルと、史上最大の規模に膨れ上がっています。
212兆ドルというのは、世界の名目GDPの3・3倍もの規模であります。このうち、実体経済を動かすためには必要のない余剰のマネーが100兆ドル以上といわれます。それが投機マネーとして暴れ回り、為替投機などさまざまな害悪を作り出しています。
そのもとで、こういった金融投機を規制するための課税が必要だということは、世界の流れになっています。金融取引税はすでにブラジルで実施され、EUでも実施に向けた流れが起こっております。国際的な投機規制という観点からみても、「提言」の提起は重要な意義を持つと考えています。
また「提言」は、二つ目の柱の「民主的経済改革」のなかで、人間らしく働ける労働のルールを確立すること、中小企業と大企業との公正・公平な取引ルールをつくることなどを提起しています。これも、世界の流れの中で大事な意味を持つと思います。
ILOは「ディーセントワーク」(人間らしい労働)をよびかけ、国際的な労賃引き下げ競争への規制を求めています。最近のILOのリポートでは、日本を名指しして、賃金の下落が、総需要の低下と物価の下落のスパイラル(悪循環)をつくりだしているとして、積極的対策を求めています。「提言」の立場は、こうした国際的な動きに日本がこたえ、その流れに合流していくという点でも、重要な意義を持つものだと考えます。
さらに「提言」は、TPP(環太平洋連携協定)に反対し、「食料主権」を保障する貿易ルールを目指すとしております。
この間、TPPに反対するたたかいは、農協のみなさん、漁協のみなさん、医師会のみなさん、さまざまな自治体の首長や議会のみなさんも含めて、大きく広がってきております。自国の食料のあり方はその国で決める、主要な農産物の関税の維持・強化はそれぞれの国の当然の権利である、こうした「食料主権」といわれる考え方は国際的な流れとなっており、日本がこの立場にたって行動することは、国際的貢献になると考えるものであります。
いま、世界に求められているのは、一握りの多国籍企業の無責任で身勝手な活動を規制し、また一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重および各国国民の生活向上をめざす民主的な国際経済秩序を確立することだと考えます。そして、世界では現にさまざまな形でそういう方向への前向きの動きが起こっています。
「提言」は、そうした世界の前向きの流れも視野に入れ、そこに合流していくことを展望して作成したものだということも、紹介させていただきたいと思います。
政治姿勢を根本から変えれば、実行可能な別の道がここにある
私は、先日、あるBSテレビに出演しまして、この「提言」について話したところ、司会者から「共産党の『提言』は、他の党とはまったく違って、要するに仕組みを根本から変えるということですね」といわれました。たしかにこれを実行するには、政治の姿勢を根本から変える必要があります。しかし、政治の姿勢を根本から変えるならば、実行可能な道がここにあるということが大事なことではないでしょうか。
消費税に頼らなくても、社会保障を充実し、財政危機を打開する道がある。消費税頼みでは、すべてがだめになる。この道しかない。その希望を大いに語りながら、消費税大増税ストップのたたかいを大きく発展させていきたいと考えております。
以上をもって、冒頭の私の報告といたします。ありがとうございました。
志位委員長の閉会あいさつ
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閉会にあたって、若干の発言をさせていただきます。
まず、たくさんの方々から、それぞれの分野での実態を踏まえての発言をいただき、私たちもたいへん多くのものを学ぶことができました。そして、全体として、私たちの「提言」を歓迎、評価していただいたことは、うれしいかぎりであります。発言のなかでは、ご注文やご意見も、率直に出されましたが、すべてしっかりと受け止めて、私たちの今後の政策活動の発展に生かしていきたいということも、申し上げたいと思います。
「提言」の基本的性格――野田政権の消費税大増税への抜本的対案
そのうえで、この「提言」の基本的性格について、あらためてのべておきたいと思います。この「提言」の基本的性格というのは、いま野田内閣が強行しようとしている「社会保障と税の一体改革」の名での消費税大増税に対して、抜本的対案を提起をするというものになっています。そういう性格のものとして作成したということを、まずご理解いただきたいと思います。
日本経済の全体を見渡すならば、ご発言でも出されたように、さらに多くの解決が迫られている問題、あるいは打開策を打ち出すべき問題があると思いますし、今日のご発言もふまえて、私たちの政策活動をさらに発展させていきたいと思っています。
ただ、この「提言」は、あくまでもいま突きつけられている野田内閣の大増税計画への抜本的対案という角度から、必要不可欠な内容にしぼって、それを盛り込むという立場から作成いたしました。「日本経済はどうあるべきか」ということに対する包括的・総合的な提言という性格のものではありませんので、そこはご了解ください。
当面する大増税計画反対の一点での国民的共同を
私たちが願っているのは、日本経済の前途をどうするかについては、さらに解決すべき多くのさまざまな問題があると思いますが、まずは、いま出されている消費税大増税計画に反対するという一点での国民的な大同団結、国民的共同のたたかいをつくりあげていきたい。国民のたたかいに“大義と展望”があることを示していきたい。これが「提言」作成に込めた、私たちの思いであります。
今日のご発言のなかでも、「将来的には消費税を上げなければならないとも思うが、いまの増税計画には賛成できない」というご意見もありました。将来的には消費税増税はやむをえないと考えておられる方も含めて、野田内閣がいま押し通そうとしている消費税大増税計画は、いくらなんでも賛成できないという方が、どんな世論調査でも五十数%と過半数になります。
こんなひどいデフレのもとで、長期の不況のもとで、労働者の賃金は下がる、中小企業の73%が赤字というもとで、大増税をかぶせていいのかという具体的な設問になりますと、どんな世論調査でも反対が多数なのです。その多数派が、まずしっかりと共同し、増税反対のうねりをつくっていくことが何よりも大事だと考えています。
「将来的には消費税増税もやむをえないかな」と思っている方とも、当面のこの大増税計画はまず共同して反対し、その先の問題はじっくりと議論していきたいと考えています。まず、この一点での大同団結がいま何よりも大切だと考えます。
「将来的な消費税廃止」という目標について
ご発言のなかで、何人かのみなさんから、「共産党は将来的には消費税廃止を目指すという立場なのか」というご質問がありました。
わが党は、将来的には消費税を廃止すべきであると主張してきており、その政策に変わりはありません。「提言」のプランを実行していけば、税収に占める消費税の割合も大幅に低下していきます。そういう点では消費税廃止を可能にする条件をつくるものともなっており、そういう流れのなかで、将来的には、消費税を廃止し、かつてのように、ぜいたく品に対して間接税をかけるという税制に戻していくという展望をもっています。
ただ、この「提言」にそれを書かなかったのは、さきほどいったように、あくまでも今度の「提言」は、野田内閣の消費税大増税計画に対する抜本的対案という立場で作成したという理由からです。
消費税を「将来的に廃止すべきだ」という方も、「5%という現状を維持すべきだ」という方も、「将来的には増税もやむをえないかな」という方も、いまの大増税計画には反対するという点で大同団結をはかることがいま何よりも大切であります。そういう理由から、「提言」には書いてありませんが、「将来的には消費税を廃止する」というわが党の立場は変わっていないことは、はっきりとのべておきたいと思います。
「貧困と格差」という角度から――消費税増税の有害性、富裕層課税の必要性
ご発言のなかで、「貧困と格差」という角度でも、消費税増税の有害性をぜひ強調してほしいというお話がありました。これはご指摘の通りで、消費税問題を考えるさいに、きわめて大事な論点だと考えています。
2000年代半ばのOECDの調査によりますと、日本の相対的貧困率は、OECD加盟30カ国のなかでも、メキシコ、トルコ、アメリカについで4番目に高いという結果が出ています。それから、母子家庭や父子家庭――一人親家庭の場合の貧困率は、OECD30カ国で日本が1位という数字が出ています。
OECD加盟国――発達した資本主義諸国のなかでも、貧困率が高い日本で、それに追い打ちをかける消費税大増税を強行していいのか。これはいわれるように大問題であります。私たちも、そういう角度からの告発を、大いにやっていきたいと考えております。
それから、OECDは、加盟諸国内での格差と貧困がどうなっているかを時系列で追跡した調査リポートを出しています。昨年12月のリポートをみますと、OECDが調査した加盟27カ国のうち19カ国で、1980年代半ばと2000年代末と比較して、格差が拡大しているというデータが出ています。
そしてOECDは、加盟国の貧富の格差が過去30年間で最高に達したとして、これを是正するために富裕層に増税すべきだと各国政府に提言しています。「所得に占める富裕層の割合の増加は、この集団が、より大きな租税能力を持っていることを示している」「富裕層に公正な比率の税を負担させるために、所得の再分配における租税の役割を再検討すべき」としています。私たちの「提言」は、こうした国際的動向とも合致したものと考えています。
大企業に総合的観点から社会的責任を求める――税、社会保険料、雇用と中小企業
ご発言のなかで、大企業の社会的負担という問題について、税金とともに、社会保険料、賃金など、多面的に見る必要があり、そういう視点で見ると日本の大企業の社会的負担は国際水準に比べて低いというご指摘がありました。
これは、おっしゃる通りだと思います。私たちの「提言」も、大企業に社会的責任、社会的負担を求めるというさいに、まず税金において「応分の負担」を求めるということを提起しておりますが、社会保険料という点でも「高額所得者の上限見直し」を提起しており、これは主に大企業の負担となります。
さらに、「民主的経済改革」のなかで、非正規雇用労働者を正社員にする、最低賃金を抜本的に引き上げる(中小企業には賃金助成をおこなう)、中小企業との取引を公正で適正なものにするなど、大企業に社会的責任を果たすことを求めています。
私たちの「提言」の考え方も、大企業の社会的責任と負担は、税だけではなく、社会保険料、そして賃金や中小企業に対する責任など、総合的観点から責任と負担を果たしてもらうという考え方のうえに立っていることものべておきたいと思います。
大震災、原発事故にさいしての大企業の責任の問題について
ご発言のなかで、このような大震災、原発事故が起こっているもとで、大企業に特別な負担をさらに求めてもよいのではないかという提起がありました。
実は、わが党は、昨年10月7日に政府に提起した「大震災・原発災害にあたっての提言(第3次)」のなかで、原発災害対策の財源として、「原発賠償・除染・廃炉基金」の創設という提案をしています。そのなかで賠償と除染にかかる費用は、第一義的には、事故をおこした加害者である東京電力が負担すべきだが、同時に、電力業界、原子炉メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行をはじめ、原発を「巨大ビジネス」として推進し、巨額の利益をあげてきた「原発利益共同体」に、その責任と負担を求めることを提起しました。
東京電力をはじめとする電力業界は、原発と核燃料サイクル計画推進などのために、19兆円もの積み立てをおこなうこととし、すでに4・8兆円の積立残高があります。この積立金を国が一括して管理する基金に移し、「原発賠償・除染・廃炉基金」を創設し、電力業界とともに、「原発利益共同体」に属する大企業にも、この基金への応分の拠出を求めるということが、私たちの提案です。電力料金を抑えるためにもこの「基金」を使い、料金値上げを許さないことも重要だと考えています。
この問題については、この「提言」には書いてありませんが、別建ての提案として、政府に提起していることを、報告させていただきます。
(この他にも、参加者の方々からは、たくさんのご意見、ご質問が寄せられました。志位委員長は、一つひとつについて具体的に答えました)
消費税大増税反対の国民的運動に“大義と展望”を提供するように力つくしたい
最後に、ご発言のなかで、この「提言」はたいへん立派なものだが、どのように国民に浸透させていくのかが課題だとの根本的な問題が出されました。
本当にそこが大切な点ですが、まずは、このような経済懇談会をどんどん全国で開いていきたいと思っております。私も、国会議員団や予定候補者のみなさんと力をあわせて、全国各地にうかがい、お話しする機会をつくりたいと考えております。あらゆる手段を工夫して、この「提言」が広く国民に伝わるように力をつくしていく決意です。
今日は、みなさんからの発言を聞き、私たちの「提言」について温かい、また高い評価もいただき、本当に心強い限りです。消費税大増税を絶対に許してはならない、そのための国民的運動を広げるうえで、それに“大義と展望”を提供するうえで、この「提言」が力になればということを心から願うものであります。
長時間にわたって、本当にありがとうございました。