2012年3月16日(金)
保安院 防災強化に反対
06年指針改訂作業 “原発への不安感増大”
内閣府原子力安全委員会が、6年前に国際原子力機関(IAEA)の基準見直しに合わせて、原発事故に対応する防災指針を改訂しようと作業部会で議論した際、経済産業省原子力安全・保安院が「原子力安全に対する国民の不安感を増大する」などと見直しに抗議、反対していたことが明らかになりました。同委員会が15日、それを示すメモなどを公開しました。
安全委員会は2006年3月、IAEAが基準の見直しを進めていたことを受けて、防災指針の見直しの作業部会を設置。原発から半径5キロ圏を目安に設定される「予防的防護措置準備区域」(PAZ)や、緊急時に避難や屋内退避ができるよう準備する同30キロ圏内の「緊急時防護措置準備区域」(UPZ)の設置などが議論されました。PAZは、重大な事故が起きた場合、放射性物質の大量放出前に圏内の住民を優先的に避難させなければならない区域です。
公開されたメモによると同年4月、保安院は防災指針の見直しで、「多大な社会的混乱を惹(じゃっ)起(き)する」「格納容器の健全性に関する従来からの説明ぶりを変更することになるので、原子力安全に対する国民の不安感を増大する」「財政的支援が増大する」などの理由を挙げ、作業部会での「検討を凍結していただきたい」と申し入れています。
また同年6月には「わが国の原子力防災については、着実に体制整備が行われており、特別の問題点や変更点はない」、作業部会の検討に「抗議する」などの意見を再三、同委員会に送っています。
結局、2007年に見直された指針にPAZなどの導入は盛り込まれませんでした。しかし、今回の福島第1原発事故を受けた防災指針の見直し作業で、PAZやUPZを設ける方針です。
保安院は15日の会見で、「当時、異議を唱えた。短時間で事故が進展するとも考えていなかった。今回の事故を踏まえてPAZが導入されるが、あらかじめ導入されていれば、違った対応ができた可能性がある」と述べるにとどまりました。