2012年3月12日(月)
主張
被害を防ぐ
「想定外」繰り返さぬ備えを
東日本大震災を機に、全国各地で地震や津波の被害想定や避難計画などの見直しが進んでいます。“天災”である地震や津波は完全に防ぐことはできませんが、十分な備えを欠いたため被害が拡大するのは文字通り“人災”です。「想定外だった」ですまさず、あらゆる可能性と危険性を想定し、被害を最小限に抑え、生命と財産を守る体制を構築することが、今回の大震災から引き出された痛切な教訓です。
あらゆる危険の想定を
マグニチュード(M)6以上の地震の発生回数が世界の約20%を占める日本は、世界有数の「地震国」です。しかも周囲を海に囲まれているため、海底で発生した地震はしばしば津波を引き起こします。大震災から1年が過ぎましたが、東北や関東を中心に各地で活発な地震活動が続いています。大震災後に日本列島の地殻にかかる力が変化し、大規模な地震や火山活動を誘発しやすくなっているとの指摘もあります。
東日本大震災は、数十年や数百年に一度といった単位ではなく、数千年単位での検証にもとづいて想定し、備えなければ、生命が守れないことを明白にしました。これまでの「想定」以上の地震は、いつでもどこでも起きることを前提に準備することが重要です。
文部科学省などのチームの研究によれば、首都直下地震の一つである東京湾北部地震の際、これまでの「想定」以上の震度7の強い揺れが都心部で発生する可能性があるといいます。「6強」との想定にもとづく従来の対策を大幅に見直すことが求められます。
静岡県の駿河湾から四国、九州沖に広がる南海トラフ(海溝)を震源とする「東海」「東南海」「南海」連動型の地震も、近い将来発生することが危惧されます。政府の有識者検討会は昨年末、地震規模の想定をM8からM9へ引き上げる見直しを行いました。
政府や地方の防災会議は、東日本大震災を教訓に防災計画の見直しを進めていますが、検討には時間がかかります。各自治体や地域でできることからでも実行していくことが求められます。地震や津波の情報の伝達、避難経路、避難場所などの総点検と見直しは一刻の猶予も許されません。
とりわけ、人口が密集し超高層ビルが林立する東京都など都市部での防災対策は抜本的な強化が急がれます。木造住宅密集地域での不燃化・耐震化も促進しなければなりません。地盤の液状化対策や高層ビルを大きな揺れが襲う長周期地震動への備えも本格化させることが必要です。無駄な公共事業ではなく、政府はこうしたことにこそ予算を優先配分すべきです。
安全なまちづくりこそ
東日本大震災の際発生したコンビナート火災などへの対策や、大量の帰宅困難者への対応なども課題です。企業など民間任せにせず、政府が対策を示すべきです。
「原発震災」だけでなく、首都圏では神奈川・三浦半島の活断層群に近い米軍横須賀基地での原子力艦船が事故を引き起こす危険も直視しなければなりません。
大震災で浮き彫りになった課題と教訓を、「安全・安心」な町づくりに反映させることが急がれます。経済効率を優先させ、人口集中と過疎化をすすめたゆがんだまちづくりからの転換が求められます。