2012年3月11日(日)
戻りたい 戻れない 古里・福島よ
被災3県300人本紙調査
“原発なくして”7割
東日本大震災から1年を前に本紙が行った被災者300人実態調査。岩手、宮城、福島の3県全体で約7割が原発をなくすことに賛成だと答えました。福島県では、原発事故の東京電力の補償金では生活再建できないとの回答が8割。地域の除染対策が「進んだ」との回答はゼロで、「ほとんど実施していない」が7割を占め、厳しい現状を反映しています。
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とりわけ福島県では多くの被災者が、故郷を離れ、先行きが見えない生活の不安を訴えました。
富岡町からいわき市に避難している男性(64)は「自分の生まれ故郷に帰って死にたい。何の変哲もない町だったけど。ふるさとってそういうものですよ」と語ります。「事故は人災です。原発は国の政策だから、国の支援は必要だし当然ですよ」
自宅再建について福島県の被災者は92%が再建を困難と回答。被災3県全体(82%)の中でひときわ深刻です。
双葉町から福島市に避難している女性(69)は「双葉は長年住んでいたところだし、愛着があります。何の心配もなく戻っていいよとなったら戻りたい。でもあの線量では戻れない」と話します。
失業中の人は56%(3県全体では36%)、農漁業や自営業など生業(なりわい)の再建を困難と答えた人は95%(同87%)に上ります。
富岡町から郡山市に避難中の男性(69)は大規模農家ですが、農業収入はゼロになりました。「戻れないなら、土地も家も買い上げてほしい。生活は苦しい。消費税増税には大反対です」
原発をなくすことには69%が「賛成」。「反対」は7%にすぎません。原発からの脱却が流れとなっていることを示しています。福島県では、原発をなくすことに賛成と答えた人は、73%を占めました。「どちらともいえない」を選んだ人も、原発への不安を口ぐちに語りました。
浪江町から福島市に避難中の男性(62)=仮設住宅自治会長=は「原発ができて雇用の場ができ、町も潤いました。原発は危険なものという意識が薄れてしまいました。危険性を再認識する必要があったと思います」と唇をかみます。
富岡町から郡山市に避難中の男性(70)は「自宅再建の展望はありません。放射能が高くてコメは作れません。原発はゼロにして、自然エネルギーに変えるべきです」と訴えました。
双葉町から福島市に避難中の女性(68)は娘の夫が東電に勤めていますが、原発をなくすことに「賛成」に丸をつけました。「仕事がなくなるとしたら困ります。でも、こういう状況をまた孫たちが受けるのなら、なくした方がいい」
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