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2012年3月5日(月)

地方発

買い物“難民”支援始まる

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 近所からスーパーや商店がなくなり、日常品の買い物にも不自由する地域や都市部の高齢化する大型団地の店舗閉鎖も増えています。このなかで買い物弱者(難民)を支援する取り組みが各地で始まっています。今回は北海道、大分からの報告です。


閉鎖農協買い取り「ノーソン」

大分・中津市 耶馬溪ノーソンくらぶ中島信男事務局長

地図 大分・中津市

 「ノーソンくらぶ」は大分県の北部、中津市耶馬溪(やばけい)町津民(つたみ)地区にあります。開店日は、月、水、木の週3日。朝8時半から夕方5時まで開いており、1日の来店者は平均8人、売り上げは平均1万5000円。

 店長は、今年76歳の中畑栄子さん。この店が農協の支店だったころからここで働いています。オープンは、2005年(平成17年)7月、農協の空き店舗(02年閉鎖)を買い取って始めました。

野菜販売受託も

 ノーソンには、二つの事業があります。一つ目は、日用雑貨を販売する購買事業。もう一つは、お年寄りが作った野菜を街のスーパーで販売する野菜販売受託事業。

 日用雑貨は、お菓子、みそ、しょうゆ、乾物、ロウソク・線香、洗剤、肌着、婦人服、長靴、スリッパ、ちり紙、野菜の種等々、現在では300種。お客さんの要望の数だけ増えてきました。

 ノーソンを始めるきっかけとなったのは、耶馬溪町をふくむ周辺5市町村の合併です。03、04年は合併を慎重に考える仲間で、話し合いを重ね、集落にも出向いてミニ集会を繰り返してきました。その時、津民地区では、農協の支店が閉鎖して、お年寄りが困っていることを訴えられました。

 同地区の戸数は約200戸、住民は約500人。ここにはスーパーもコンビニもなく、農協の支店が日用品の購買から金融まで扱ってきました。これが閉鎖され、地区には買い物をできるところがなくなってしまいました。

 合併は、中津市に吸収合併という形になりました。運動の中で、「町づくりは行政だけに任せてもだめ、住民が自ら行うもの」という思いがノーソン出発のきっかけとなりました。

 理事10人のうち、合併反対の運動に関わったものは6人。私は言い出しっぺの一人です。

 開店に際しては地域の人たちと話し合いを重ねました。最初は多くの人が半信半疑。ここで本当にやっていけるのか、失敗したら借金まで背負ってしまうのではないか。不安の声が多く寄せられました。

おもしろがって

 しかし、オープンしてみると、ばあちゃんたちはすぐに認知してくれました。先駆けで始めた野菜販売事業にも関心が寄せられました。現金がばあちゃんたちを、元気にする。多い人は10万円。少ない人は1万円にも満たないですが、それぞれの事情があり、無理なく楽しんでいるようです。

 ノーソンを始めて思うことは、地域は、そこに住む人たちの、少しの努力と少しの協力で、楽しくなるのではないかということです。そして悲壮感で始めたことであっても、何よりそのことを面白がることで、物事がうまく回り始めると思うのです。ノーソンは、全国各地に設立可能です。「コンビニは、資本で提携するが、ノーソンは志で提携し、情報を共有する。コンビニは、街に展開するが、ノーソンは、限界集落に展開する」。そうなると痛快だなと思います。皆さん一緒に楽しみませんか。


店舗ゼロ地区に「出前商店街」

北海道標茶町 深見迪(すすむ)町議会議員

地図 北海道標茶町

 北海道標茶(しべちゃ)町は、1099平方キロメートルという広大な面積に8400人が住んでいる町です。町の65歳以上の高齢者人口は、12年前では21・61%でしたが、今年1月には28・2%になりました。町の推計では、2020年には、高齢者人口は36・5%と見込んでいます。

40店以上も閉鎖

 高齢者の買い物困難者支援の課題は、日々の暮らしを支える面で、また高齢者のみなさんが生き生きと人と交わりながら生活していく面でも、これからのまちづくりの中で避けて通れない課題です。

 この中で、町は、国の「緊急雇用創出推進事業補助金(1058万3千円)」の一部を活用し、商工会に委託して2010年から塘路(とうろ)地区での「出前商店街」の取り組みを開始しました。

 この20年間で標茶町では卸売、小売り、宿泊等飲食店が40店舗以上も閉店しました。塘路地区も今では一軒もありません。

 塘路地区は、標茶町市街地から約20キロメートル離れ、105世帯の小さな集落ですが、高齢化率は37%を超えています。この地区に毎月3回、生鮮食料品、パン、乳製品、洋品、介護用品、日用雑貨、生花、金物、等を販売する市街地の商店9〜12店がトラックに品物を積んで塘路住民センターで店を開きます。トラックのガソリン代は商店に保障されます。

愛のりタクシー

 足かけ3年目を迎えた取り組みは、今年の2月で28回目を数えました。

 民間の食料品中心の移動販売車も来ますが、住民センターで店の人と世間話をしながら、品物を自分の目で確かめ、ゆっくりと買い物できる喜びは、ただ便利だというものだけでなく、生きる力にもなっています。「出前商店街」では、商店が独自に品名を書いた注文書を作成し、予約も受け付けています。

 私は議会で、過疎と少子高齢化が進む町で、「高齢者が歩いて買い物のできるまちづくり」や「安心して住み続けられるまちづくり」のため、「市街巡回バス」の運行を提案してきました。当時の今西猛町長は、保健総合まちづくりプランをもとに可能性について検討していくと答弁しました。

 今年度で国の補助金は終わりますが、町では引き続き町の予算で支援する方向を目指しています。また、町の第4期総合計画では「公共交通の確保」として、買い物や病院通院への高齢者などの移動手段として、標茶市街地内のコミュニティーバス(地域密着型バス)の運行環境の検討も考えています。

 このほか標茶町では、高齢者、障がい者の地域福祉の増進を目的として昨年町民が立ち上げたNPO法人「ウェルフェア」で、市街地の買い物困難者が低料金で相乗りし買い物できる「愛のりタクシー」の事業を、ハイヤー会社と契約を結び3月から始めました。

 同タクシーは夏季は1回1台690円、冬季は770円。利用者は入会金1000円、年会費2000円を払って会員になると1回200円で利用できます。今後も町と町民が一体となった取り組みが望まれます。


買い物“難民”とは

 普段住んでいるところで日常の買い物をすることが困難になっている地域、高齢者のこと。内閣府や経済産業省などは高齢者を中心に約600万人に及ぶという推計をしています。実際はもっと多いと指摘する研究者もいます。

 深刻な事態の進展に、経済産業省は「買い物弱者を応援する3つの方法」として(1)店をつくること(2)家まで商品を届けること(3)人々が出かけやすくすること−が必要と提案しています(買い物弱者応援マニュアル)。

 しかし経済産業省は、大規模小売店舗法(大店法)を廃止し、規制緩和で大型店の出店を進めて地域商店街の衰退を招いてきた当事者です。また政府が強引に進めてきた市町村の合併も、地域から農協や商店、スーパーなどが撤退する大きな原因になってきました。こうしたことへの反省を抜きに「店をつくること」といわれても、ことは簡単ではありません。

 各地で始まっている取り組みを本気になって支援する取り組みがいま重要になっています。


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