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2012年3月5日(月)

主張

生活保護の最高裁判決

「生存権切り捨て」追認は非道

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 70歳以上の生活保護受給者に支給していた老齢加算を政府が廃止したのは「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法25条に反すると、その取り消しを求めている生存権裁判で最高裁は2月28日、東京訴訟の原告の訴えを退けました。貧困に追い込まれながらも「人間らしく生きたい」という悲痛な叫びを無視した不当判決です。生存権を侵害した行政の誤りを追認する最高裁判決は司法の果たすべき役割を放棄したものというほかありません。

尊厳奪う冷たい仕打ち

 「1日2食の生活。栄養のとれない車いすの夫がだんだんやせ細っていった」「クーラーを我慢し熱中症で倒れ、救急車で運ばれた」「遠方で入院中の母の見舞いにもいけない」「香典なども出せず、引きこもっている」―。2006年に強行された老齢加算廃止(減額は04年から)は、高齢者の生きがいや尊厳を奪い、孤独に追い込み、命まで脅かす事態を引き起こしています。生存権裁判は加算廃止の違憲・違法性を問い、全国で100人以上がたたかっています。

 老齢加算は、70歳以上の生活扶助費を一定額(東京23区などで月約1万8千円)底上げするもので扶助費の約2割を占めていました。高齢者には「特別な需要」があるとして、生活に不可欠な制度と位置づけられて1960年に始まったものです。厚生省(当時)は高齢者に必要なものとして▽食べ物をかむ力が弱いので、他の年齢層に比べて消化吸収がいい良質の食品▽肉体的条件から暖房などの費用▽寒さや湿気などに対応できる寝具、衣料品▽墓参などの社会的費用―などを具体的に示し、老齢加算がなくてはならないと繰り返し説明していました。生活扶助費“本体”は高齢者になるほど減額される仕組みになっているため、加算がないと最低限の生活すら維持できないのです。

 半世紀近くにわたって高齢の生活保護受給者を支えてきた加算廃止を突然持ち出したのは、小泉純一郎首相の自公内閣です。「構造改革」路線を推進する財界主導の経済財政諮問会議などが生活保護費をやり玉にあげ、「財政的理由」でまともな議論や検証もせずに廃止したのです。当時、母子家庭への母子加算廃止も決められましたが、国民世論と運動の広がりのなかで中止され、加算廃止に道理がないことを示しました。こうした老齢加算廃止を高齢者の生活に「影響を及ぼしていない」と正当化した最高裁の責任は重大です。

 生活保護制度は最低賃金など国民のくらし全体にかかわる制度に連動しています。生活保護水準の引き上げは国民生活全体の底上げにつながるものです。

 自公政権から代わった民主党政権が「社会保障・税一体改革」で生活保護制度の適正化・見直しを打ち出し、前原誠司政調会長が「社会保障は無駄の宝庫」として生活保護費を大幅に削り込む対象にあげていることは許されません。

安全網の充実が緊急課題

 老齢加算復活をはじめ生活保護制度の改革・充実によって「最後のセーフティーネット(安全網)」として機能させることが急務です。生存権裁判では4月に福岡訴訟の最高裁判決が予定されています。憲法25条にもとづく社会保障制度を再生・充実させる世論と運動を広げることが重要です。


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