2012年3月3日(土)
衆院予算委中央公聴会
消費税増税への批判相次ぐ
衆院予算委員会は2日、中央公聴会を開き、8人の公述人が意見陳述。消費税増税への批判も相次ぎました。日本共産党の笠井亮、宮本岳志両議員が質問にたちました。
応能負担が原則 公述人
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意見陳述で立正大学の浦野広明客員教授は、負担能力に応じて税を負担する「応能負担」の原則が憲法の立場だと強調し、消費税は低所得者に重い逆進性を持っている上、下請け企業は転嫁できず、大企業が輸出戻し税などで恩恵を受けていると批判しました。
税の使途も憲法にもとづき社会保障を中心とすべきであって「すべての税が社会保障目的税だ」と指摘し、所得税と法人税の累進課税を強化すれば消費税に頼らなくても税収を確保できると述べました。
日本金融財政研究所の菊池英博所長は「(消費税増税に頼る政策は)成長を犠牲にするもので極めて危険だ」と主張。消費税を上げても「全体の経済が萎縮して、所得税や法人税が落ち込んで増税分が吹っ飛ぶ」ことは1997年の経験で明らかだと述べました。
株式会社日本総合研究所理事の湯元健治氏は、消費税増税について認めるものの、実施時期については「それ(デフレ脱却)が見込めない状況下でやるのは、国民に、より大きな負担がでてくる」と述べました。
青山学院大学の三木義一教授は、国際的な法人税引き下げ競争について「愚かな政策で自殺行為だと各国は分かっている」と強調。
ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長は、割増残業代を現行の1・5倍から米国並みの1・7〜2倍に引き上げて労働時間を短縮すれば、雇用増加、介護や育児と仕事との両立が可能になると提案しました。
日本経団連の村岡富美雄部会長は、消費税増税は「重要な一歩だ」と強調。環太平洋連携協定(TPP)について「早期参加は喫緊の課題だ」と述べました。
大企業優遇ただせ
笠井議員が質問
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質問に立った笠井議員は政府が「一体改革」で「社会保障財源を消費税でまかなうとしていることをどうみるか」と質問。立正大学の浦野広明客員教授は「消費税という負担能力を考慮しない税でまかなうことは福祉重視の日本国憲法に反する。福祉予算が増えれば消費税が上がるという悪循環になる」と強調しました。
笠井氏が「政府は転嫁できるようにするというが、中小企業が消費税を転嫁できないのが実態だ」と問うと、青山学院大学の三木義一教授は「制度があっても利用しにくいのが下請けのつらさだ」と答えました。
笠井氏は、所得税の最高税率引き下げなど「税のフラット化」にふれ、大企業・富裕層優遇税制をただすべきだと強調。浦野氏は、一律5%の消費税や一律10%の住民税など「税のフラット化」は「応能負担」の原則に反すると批判。所得税・法人税収は1990年以降半減しており、累進課税を強化し、富裕層に対する証券優遇税制を改めるべきだと主張しました。
また、笠井氏が法人税減税がなにをもたらすかをただすと、日本金融財政研究所の菊池英博所長は、恩恵を受けるのはもっぱら黒字の大企業であり、「剰余金や株式配当に回るか海外に向かうだけで、国内の経済効果は皆無に近い」と指摘しました。
国は地方財源確保を
宮本議員が質問
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質問に立った宮本議員は、公立小学校の35人学級が1年生だけにとどまっている現状をあげ、国が責任を果たすべきだと強調。全学年で30人学級導入を進める仲川げん奈良市長は「日本はOECD(経済協力開発機構)先進諸国で教育投資の率が非常に低い」と指摘し、先行して取り組む自治体への財源措置を求めました。
宮本氏は、国が保障すべき地方財源が臨時財政対策債として地方に押しつけられている現状にふれ、ナショナルミニマム(生活の最低保障)実現のため交付税法を改正し財源を保障すべきだと質問。仲川氏は「ナショナルミニマムは自治体間格差が拡大している」と述べ、国の責任による財源確保を求めました。
「社会保障と税の一体改革」について宮本氏は、社会保障の「充実」に回すと言っても消費税増税分の1%分である2・7兆円しかないと指摘。日本総合研究所の湯元健治理事は「財源不足が深刻化するのは医療や介護」「これらが十分かどうかは甚だ不透明」と述べ、宮本氏の指摘を認めました。