2012年3月2日(金)
米朝合意 今後の展開に注視
米国務長官「正しい方向」
【ワシントン=小林俊哉】北朝鮮が核実験、ミサイル発射、ウラン濃縮活動の凍結などに同意したことに関連し、クリントン米国務長官は2月29日、下院歳出委員会の海外活動小委員会で、「正しい方向での控えめな最初の一歩だ」と歓迎しました。
クリントン氏は、米政府として「北朝鮮の新指導部が、国際的義務の履行を通じて、国を平和の道に導くよう期待してきた」と主張。「北朝鮮指導部を行動によって判断する」と述べました。
ホワイトハウスのカーニー大統領報道官は同日の記者会見で、「朝鮮半島の完全で検証可能な非核化に向けた積極的な最初の一歩だ」として「非常に歓迎する」と表明。「注目に値する展開であり、今後の行動を注視していく」と述べました。
北朝鮮の新指導部については「(今回の合意が)指導部交代から間もない時期に決断されたことは、前向きなサインだ」と主張。「われわれは、北朝鮮指導部の行動の継続性を期待する」と述べました。6カ国協議の再開については、「その方向への一歩だが、北朝鮮側の行動にかかっている」と述べました。
米政府高官は同日、今回の合意は「真剣な交渉」に向け、「北朝鮮が挑発的な行動から手を引く」ための「前段の措置だ」と主張。「今回の合意は、北朝鮮の非核化と国際的義務の履行に向け、北朝鮮が後戻りしない措置をとるための真剣な交渉のドアを開いたものだ」と述べました。
一方で、6カ国協議の参加国との個別の協力を深める中で、次の多国間協議の場に進みたいとの意向を表明。今回の合意を「北朝鮮の意図の真剣さを示す最初の兆しだ」と述べ、「大事なことは、これを、非核化に向けた実質的で意義のある交渉に実らせることだ」と述べました。
北朝鮮新体制でも対米交渉に前向き
米朝協議での合意は、金正恩(キム・ジョンウン)氏を中心とした北朝鮮の新指導部が、両国関係の改善に前向きな姿勢であることを示すとともに、核兵器を放棄する前提として米国による「敵対政策」の転換、米朝国交正常化が必要だとする、従来の立場をそのまま継承していることを改めて示しました。
北朝鮮は現在、金正日(キム・ジョンイル)総書記の死去を受け、正恩氏を中心とした体制への移行を進めています。正恩氏は、金総書記がそうだったように、父親の「遺訓」に基づく統治を強調。朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は連日、「(金総書記の)思想、業績、遺訓はわが党の唯一の指針だ」(2月29日付)などとする記事を掲載しています。
核問題をめぐる米朝間の協議は昨年7月から続くもので、昨年12月に総書記が死去する直前にも、暫定合意に達したと報じられました。今回の合意は、金総書記の「遺訓」に基づく外交面での初めての成果といえます。
北朝鮮は、これまで「朝鮮半島の核問題は米国の対朝鮮敵視政策に根源がある」(1994年、金日成〔キム・イルソン〕主席)と主張。金総書記は、米国の「核脅迫」に対する「抑止力」として核兵器開発を進める一方、「朝鮮半島非核化」の実現に向けた米国との直接交渉を求めてきました。
今回の米朝協議では、米国が北朝鮮を敵視しないことを確認するとともに、「国交正常化」や「朝鮮半島における恒久的平和体制の確立」などを定めた6カ国協議共同声明の履行意思を再確認。北朝鮮は今後の交渉で米国に制裁の解除を求める立場も示しています。 (中村圭吾)