2012年3月1日(木)
「君が代」条例強行の暴挙
大阪市議会で維新・自・公
共産党は反対
大阪市議会が開会した28日、深夜の本会議で市立学校の行事で教職員に「君が代」の起立斉唱を義務付ける条例案が可決され、成立しました。橋下徹市長が提案していた条例案を「大阪維新の会」と公明党、自民党が一部修正で合意した上で賛成。日本共産党、民主系会派は反対しました。
昨年6月、府議会の「維新」過半数で強行された「君が代」起立強制条例と同様の内容で政令市では初めて。憲法19条で保障された「思想・良心の自由」を侵害する暴挙です。
反対討論で、日本共産党の井上浩市議は、「国旗・国歌」法制定時にも、国民と学校現場への義務付けや強制はしないと確認されていたことを指摘。条例案は憲法の原則に反していると批判しました。
「君が代」斉唱を強制することは、教育関係法令が禁じる「不当な支配」そのものだと指摘しました。
井上氏は、「教育には、政治的中立が求められている」と強調。「市長の立場は教育への政治介入を無理やり合法化しようとするものだ」と、断固反対の立場を強調しました。
同条例は目的に、市民、子どもが「我が国と郷土を愛する意識の高揚に資する」と掲げています。市施設での「日の丸」掲揚も義務付けています。
「君が代」条例可決
「維新」へのすり寄り 問われる自公の姿勢
大阪市議会で、「大阪維新の会」、公明党、自民党が「君が代」強制条例を可決したことは、昨年6月の府議会で単独過半数をもつ「維新」が主要会派全ての反対を押し切り、同様の条例を強行したことに続く暴挙です。
条例は、市立学校の行事で教職員に「君が代」の起立斉唱を義務付ける内容です。
橋下徹市長は「先生が(起立斉唱の)ルールを守らなくていいのか」と問題をすりかえていますが、「君が代」は戦前、アジア・太平洋に戦争の惨禍をもたらした天皇主権の象徴として用いられてきた歴史があり、教職員が起立斉唱を行うかどうかの自由は憲法19条の「思想・良心の自由」によって保障されています。
条例で教職員が強制されるならば、式に参加する子どもや保護者も事実上の強制を受けることになりかねません。
しかも、侵略戦争を美化する「日本教育再生機構」の高橋史朗理事や八木秀次理事長が、25、26日に続けて大阪入りし、「維新」幹部や松井一郎知事らと集会を行っていた事実は、条例に込められた思想的背景を物語っています。
重大なのは、今回の条例の採決で、市議会(定数86)の与党の「維新」(33人)のみならず、公明党(19人)、自民党(17人)まで賛成に回って、過半数を形成したことです(当日はうち2人が欠席)。背後には、自公両党の「君が代」問題に対する考え方だけでなく、総選挙を視野に入れた「維新」へのすり寄りがあります。
本会議を8時間も中断して続けられた「維新」、公明、自民の修正協議では、条例案から「市立学校における服務規律の厳格化を図る」との文言が削除されましたが、一方で市長と教育委員会が「適切」な実施のための「必要な措置を講じなければならない」とする規定が盛り込まれました。教職員への起立斉唱義務付けという点では何も変わっていません。
同条例では、罰則は設けられていませんが、「維新」の松井一郎大阪府知事はすでに府議会に、同じ職務命令に3回違反すれば、原則的に免職となることを明記した職員基本条例案を提出しており、橋下市長も市議会に同様の規定が盛り込まれた条例案を提出するとみられます。
最高裁は1月16日、「君が代」起立斉唱の職務命令に違反した教員への処分について、3回違反で減給処分は違法と判決しており、免職とする条例案の矛盾は明らかです。
今後、市議会に提出される“独裁政治への手段”「教育基本条例案・職員基本条例案」に自公両党がどのような態度をとるのか。橋下市長と「維新」のみならず、自公両党の姿勢が厳しく問われています。 (藤原直)